研究課題/領域番号 |
17K10159
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
赤尾 見春 日本医科大学, 医学部, 助手 (60350112)
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研究分担者 |
羽山 恵美子 東京女子医科大学, 医学部, 非常勤講師 (00349698)
古谷 喜幸 東京女子医科大学, 医学部, 特任助教 (10424673)
勝部 康弘 日本医科大学, 医学部, 助教授 (20246523)
中西 敏雄 東京女子医科大学, 医学部, 特任教授 (90120013)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 肺動脈性肺高血圧症 / 心筋細胞 / パッチクランプ法 / 電気生理学 |
研究実績の概要 |
肺動脈性肺高血圧症(PAH)に対する治療は小児科領域においても盛んに行われるようになった。治療として3つの経路を介する血管拡張薬が用いられているが、それら薬剤の心臓への影響に関する基礎研究はほとんど行われていない。申請者らはこれまでラットを用いてPAH治療薬の心筋イオンチャネルに関する研究を行ってきた。本研究はこれまでの研究をさらに発展させるべくヒトiPS細胞由来心筋細胞を用いてPAH治療薬の心筋イオンチャネルへの影響を調べることを目的とする。PAH治療薬のヒト心筋細胞への影響を検討した基礎研究は国内外を通じて検討されておらず、本研究の成果はPAH治療の現場に非常に大切な情報を提供できるものと考えている。 iPS細胞の樹立は京都大学からの指導に基づき作製し、作製したiPS細胞の多分化能を評価・確認のうえ、心筋細胞への分化誘導を行った。さらに分化誘導した細胞が心筋細胞であることの確認のため心筋細胞マーカーの検出、Ca2+トランジエントなどで行ったのち、ヒトiPS細胞由来心筋細胞に対して、多電極アレイ法、パッチクランプ法などの手法を用いて電気生理学的検討を加えた。検討を加えたPAH治療薬は3つの経路、すなわち①エンドセリン経路、②一酸化窒素経路、③プロスタサイクリン経路の代表的な薬剤である。今年度は主にヒトiPS細胞由来心筋細胞の作製と一部並行して電気生理学的研究を行った。研究成果は第53回日本小児循環器学会(2017年7月7日~9日、アクトシティ浜松;演題名:①肺高血圧症治療薬のiPS細胞由来心筋細胞Ca2+電流に及ぼす影響、②iPS細胞を用いた心筋細胞分化における新生児型Naチャネルの発現)で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の目標はヒトiPS細胞由来心筋細胞の作製と一部並行して電気生理学的研究を行うことであった。健常者からヒトiPS細胞由来心筋細胞の作製することはでき、一部並行して電気生理学的研究を行った。ヒトiPS由来心筋細胞でもラット心筋細胞と同様にエンドセリンはCa2+電流を抑制したが、ボセンタンならびにアンブリセンタンの事前投与により抑制はブロックされた。これらのことから、肺動脈性肺高血圧症治療薬のうちのエンドセリン経路の薬剤、ボセンタンならびにアンブリセンタンはヒト心筋細胞への直接の影響(悪影響)がないことが推測された。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度以降はヒトiPS由来心筋細胞の作製、維持・管理に加え、多電極アレイ法(multi electrode array: MEA)法ならびにパッチクランプ法を用いた電気生理学的研究を中心に研究を行う。平成29年度にそのごく一部の関連する研究を行ったが、平成30年度では、一酸化窒素経路薬剤、プロスタサイクリン経路などについても詳細に検討を加える予定である。一酸化窒素経路の薬剤としてシルデナフィル、ファスジルなど、プロスタサイクリン経路の薬剤としてベラプロストなどについて検討を加える。また、カテコールアミン薬の存在する場合と存在しない場合の効果も合わせて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、電気生理学研究を初年度よりもう少し進める予定であったが、iPS細胞の供給、維持・管理等の調整がつかず、計画していた研究内容まで進めることができず繰越金が発生した。平成30年度では繰越金も含め、研究の推進を図る。
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