研究課題/領域番号 |
17K10161
|
研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
芦田 明 大阪医科大学, 医学部, 講師 (80278514)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 酸化ストレス / ミトコンドリア / ネフローゼ症候群 |
研究実績の概要 |
ネフローゼ症候群モデルラットであるピューロマイシンラット(PANラット)に対して、ミトコンドリア特異的ラジカルスカベンジャーであるmitoTEMPOを投与し、その尿蛋白軽減効果を検討した。その結果、PANラット群に比し、PAN+mitoTEMPO群では、尿蛋白は著明に減少していることを確認した。本年は、この尿蛋白減少効果が酸化ストレス軽減によるものかどうかを検討する目的で、PANラット群、PAN+mitoTEMPO群、mitoTEMPOのみ群、コントロール群の血液、尿、腎糸球体を採取し、酸化ストレスマーカーとしてTBAを測定した。また尿蛋白減少と酸化ストレスマーカーの減少がミトコンドリア障害の軽減によるものかどうかを確認するため、腎臓の糸球体ポドサイトを電子顕微鏡下で観察し、その足突起の癒合程度およびミトコンドリアの形態学的評価を行った。ミトコンドリア障害の評価、グレーディングにはSessoらやSweetwyneらの方法を用いた。 結果、PAN群に比しPAN+mitoTEMPO群では糸球体、尿のTBA値は有意に低値であり、酸化ストレスの軽減を確認した。また、電子顕微鏡によるポドサイトの検討では、PAN群に比し、PAN+mitoTEMPO群では足突起の癒合が軽減し、ミトコンドリア障害の程度は有意に軽減していた。これらの結果より、ミトコンドリア特異的抗酸化剤であるmitoTEMPOを用いることで、ミトコンドリアにおける酸化ストレスが抑制され、ミトコンドリア障害が軽減した結果、ポドサイト障害が軽減し、尿蛋白が減少したことを明らかとした。現在、本結果をまとめ論文投稿中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、ミトコンドリア障害をいかに評価するかが大きな問題であった。我々は電子顕微鏡による観察により、ミトコンドリアの形態変化よりその障害程度を評価した。現在、ミトコンドリア遺伝子のコピー数をリアルタイムPCRで測定し、ミトコンドリア障害の評価として腎および血液中のマーカーとなるかどうかを検討している。当初の研究計画ではミトコンドリア遺伝子のコピー数測定の検討をする予定であったが電子顕微鏡によるミトコンドリア障害の評価を先行させたため、現在の解析となった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後はヒトの腎炎、ネフローゼ患者におけるミトコンドリア障害の関与を検討するため、腎生検標本における電子顕微鏡観察を行い、糸球体ポドサイトおよびポドサイト内のミトコンドリア評価を今回の実験と同様に評価する。また、末梢血でのミトコンドリア遺伝子のコピー数をリアルタイムPCRで測定し、病勢のマーカーとなるかどうかを検討する。 このため、現在、本学倫理委員会に申請中である。 一方、ミトコンドリア保護剤とされ、人体への投与が可能なコエンザイムQ10やカルニチン、現在、東北大学で研究中のMA-5などにおいても同様の検討を行い、ミトコンドリア障害の緩和が腎疾患治療に有効であることを証明し、ヒトの腎疾患治療のツールの一つとして確立していきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、PAN腎症モデルラットにおけるミトコンドリア障害の証明を如何にin vivoの実験系で行うかが論点となるところであった。本年度にはまずミトコンドリア障害の評価を電子顕微鏡による形態学的な変化の観察を中心に行い、その形態学的変化に差を見出した。そこで、ミトコンドリア障害の証明ができ、論文化を先行させている。そのため、当初の計画にあったリアルタイムPCRによるミトコンドリア遺伝子のコピー数の評価は次年度の研究課題と考え、分子生物学的解析に要する実験器具、試薬の購入をまだ行っていないため。次年度使用額が生じた。次年度においてはラットモデルにおける腎および血液からミトコンドリア遺伝子のコピー数を分子生物学的に解析し、腎疾患におけるミトコンドリアの障害指標としてミトコンドリア遺伝子のコピー数がバイオマーカーとなるかどうかを検討するためにリアルタイムPCR施行のための試薬を購入する。
|