研究課題/領域番号 |
17K10162
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
片山 博視 大阪医科大学, 医学部, 診療准教授 (30194781)
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研究分担者 |
宇津野 秀夫 関西大学, システム理工学部, 教授 (00362442)
根本 慎太郎 大阪医科大学, 医学部, 教授 (20237811)
岸 勘太 大阪医科大学, 医学部, 助教 (20408503) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 肺高血圧症 / 肺動脈閉塞度 / 圧―流速関係 / 血管径―流速関係 / 位相角 / 超音波診断装置 / speckle tracking法 |
研究実績の概要 |
背景及び目的 肺高血圧の診療において肺小動脈の閉塞性病変の定量的評価は重要だが確立された方法はない。理論上、波動現象の2変数(圧力と流速)の位相差は動脈脈管の末梢の閉塞病変を反映する。我々は肺循環を波動現象としてとらえ、波動現象の位相差により、肺小動脈の閉塞度の新しい評価方法を開発することを目的に研究を進めてきた。 我々は既に種々の病態の小児21例の心臓カテーテル検査時に圧―流速同時測定ワイヤーにより位相角θを算出し、従来の指標と比較検討している。その結果、カテーテルで得られた位相角θは、平均肺動脈圧(y = -0.2188x + 20.283、r=0.40)、肺血管抵抗(y = 1.2475e-0.017x、r=0.48)と負の相関関係を認めた。またTAPVC術後の肺静脈狭窄や18トリソミー合併の肺高血圧症例では従来の指標より高い閉塞度を示している。 本研究は侵襲的検査でしか求めることができなかった位相角θを発展的に非侵襲的に評価する方法を確立することを目的とする。 方法 肺動脈のシミュレーション回路で、光ファイバー圧力センサーによる圧力波形とレーザー変位計の血管径の変位波形を比較検討した。さらに末梢側を完全閉塞させたシミュレーション回路でカテーテルによる圧ー流速から算出された位相角と超音波診断装置による血管径ー流速から算出された位相角を比較した。 結果 シミュレーション回路での圧波形と血管径の位相変化の位相は完全一致を認めた。さらに完全閉塞させたシミュレーション回路内でのカテーテルの圧力-流速波形と超音波画像診断装置の血管径変位-流速波形の比較においてもほぼ同様の大きな位相差を生じていることを確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シミュレーション回路で圧力波形の位相変化は血管径の位相変化に置換できることが確認できたため、体表面超音波診断装置を用いて小児の肺動脈の血管径と流速波形の位相変化から位相角を求める検討を行っている。血管径の計測は任意の断面を設定できるフレックスM-モードを用いたMモード心エコー法で、また流速波形の計測は主肺動脈でのパルスドプラ法を用いて検討している。 流速波形の計測は安定したデータが得られているが、血管径の計測は心臓自体の動きに影響され、安定したデータが得られていない。 我々は心臓自体の動きに影響されないspeckle tracking法を用いて血管径の計測を行い、その精度を検証している。
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今後の研究の推進方策 |
1)speckle tracking法による血管径の位相変化の計測の精度を検証し、パルスドプラ法による 流速波形の計測とともに、位相角θの算出を行う。 2)今までの我々の研究で行ってきた心臓カテーテル検査における圧―流速関係から求められた位相角θと、体表面超音波診断装置から求めた血管径―流速関係の位相角θを比較検討し、肺動脈閉塞度の非侵襲的評価法として妥当か否かを検討する。 3)さらに低酸素チャンバーを用いた低酸素性肺高血圧ラットを用いて、組織学的変化と本指標の関係を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画では、肺動脈拍動流回路での「圧力」データから「血管壁径」データへの置換、「血管内測定ドプラ血流」データから「血管外からの測定ドプラ血流」データへの置換の妥当性を確認したうえで、臨床的に取得された血管径ー血流速度データから求められる位相角θを、今までの我々の研究方法で求められる心臓カテーテル検査から得られる圧力―血流速度の位相角θを比較検討する計画であった。しかし前述のごとく、フレックスMモードから得られる血管径の測定が心臓の動きに影響を受け、精度の高いデータが得られず、圧力―血流速度関係の位相角との比較ができなかった。そのため、今年度使用する予定の圧血流速度測定ワイヤーCombowire4本(173000円X4本)が繰り越しとなった。 現在、心臓の動きに影響されないspeckle tracking法による血管径の測定データを検討中であり、次年度はこの方法による血管径ー血流速度データの位相角と圧力―血流速度関係をの位相角を比較検討する計画であり、繰越の4本は次年度使用する予定である。 さらに低酸素飼育システムを用いて低酸素性肺高血圧ラットによる組織学的変化と本指標の関係を検討する。
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