研究課題/領域番号 |
17K10164
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
兼松 明弘 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (90437202)
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研究分担者 |
鳥越 一平 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (40134663)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 排尿測定 / 乳幼児 / おむつ / インピーダンス |
研究実績の概要 |
初期の試作品は尿の吸収材の下に基盤を置くタイプのものであったが、測定信頼性の点で問題があった。具体的には以下のような問題点があった。 (1)電極インピーダンス変化が尿総量変化に対して時間遅れをもつ、(2)電極インピーダンス変化が飽和する、(3)尿総量変化は単調増加であるのに電極インピーダンスが減少方向に変化する、(4)電極インピーダンス変化が尿総量変化に追いつけず波形がなまる,などの現象が生じていた。吸水層内の尿の拡散・吸収過程を数理モデル化して,劣化した電極インピーダンス信号から尿流率を逆推定することは、原理的には可能だが現実には悪条件問題となり困難であった。 さらにこのタイプのものでは先行特許が存在していたために開発そのものの意義が疑問であった.そこで、発想を転換し布オムツそのものに電極を配置することで、インピーダンスと尿総量の間の関係が線形近似でき,尿総量がインピーダンスから直接単純に推定できるような電極を実現した.電極は(イ)電解液検出感度の面的分布が,吸水層の有効吸水領域全体でマクロに見て一様な感度をもち,(ロ)電解液検出感度の吸水層厚み方向の分布が,吸水層の中央近傍で最大感度を有するように構成し設置した.このような電極によって,従来の電極の問題点を解消し,インピーダンスと尿総量の間の関係を実用上十分な程度で線形近似することが可能となった. この方法で作成した試作品の性能をシリンジポンプを用いて標準尿流の検出感度を調べることでテストした。インピーダンス変化を微分した曲線を描くことによって、臨床試験において想定される生理的範囲内でのさまざまな一回注入量、注入速度で、想定曲線とほぼ一致した尿流曲線が描出された。 2019年4月現在、現在兵庫医科大学および熊本大学において特許出願の手続き中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間3年目ではあるが、実用可能で従来の枠組みの限界を克服する測定装置を作成して特許申請に至ることが可能であった。 特許取得後に、臨床研究に使用するサンプルは商品化へのブリッジング期間の開発を主に手がけるベンチャー企業に依頼する方向である.臨床試験は2019度中には着手可能である。予定していた研究は、研究期間を1年延長することで、データ解析、論文作成まで含めて終了予定である。
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今後の研究の推進方策 |
特許取得後に、臨床研究に使用するサンプルは商品化へのブリッジング期間の開発を主に手がけるベンチャー企業に依頼する予定である.ベンチャー企業と共同した試用品を用いて以下の2件の臨床研究を本学および研究参加施設の倫理審査委員会の裁可後に行ない、研究終了後に解析結果を国内外の学会発表と論文発表を行う。
1.6-12ヶ月の男児における尿流測定の標準値の作成 兵庫医科大学泌尿器科および小児外科で、6-12ヶ月男児に対する停留精巣およびそけいヘルニアの手術後に、初回排尿を検出する尿流センサーとして用いる。これによりこの年代の排尿のノモグラムを作成する(N=50例) 2.尿道下裂術前後の尿流測定の研究 兵庫医科大学、東京都立小児医療センタ-、兵庫県立こども病院との共同研究にて、乳児期に尿道下裂修復術を行う患者の術前後の尿流測定を、1症例について4回ずつ行なう。これにより乳児期の尿道形成による排尿状態の変化を評価する(N=50例)。
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