研究課題/領域番号 |
17K10165
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
小松 誠和 久留米大学, 医学部, 講師 (50343687)
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研究分担者 |
田中 征治 久留米大学, 医学部, 助教 (20389282)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ネフローゼ症候群 / リツキシマブ / BCRレパトア / 免疫フェノタイプ / TCRレパトア |
研究実績の概要 |
平成30年度は、ヒトCD20抗原に対するマウスーヒトキメラ型モノクローナル抗体であるリツキシマブ(RTX)治療を行う難治性ステロイド依存性ネフローゼ症候群(SDNS)患者について、これまで登録の50名の血液検体を継続的に免疫フェノタイプ解析を行うと同時に、新たに15名の新規患者の経時的解析を追加した。新規症例においても昨年観察されたようにB細胞がRTX投与後速やかに消失し、初回投与から約20-30週を経過した患者においては多くの患者でB細胞の再構築を認める結果となり、昨年度の結果が検証できた。RTX投与患者の中には一旦寛解したものの再発を認める症例もあり、再発の際に昨年度見出したB細胞におけるCD10の発現が臨床経過と関連する可能性が示唆された。 臨床情報の整理も進んでおり、昨年の1名の患者のB細胞のBCRレパトア解析に引き続き、臨床経過に特徴のある3名の患者のRTX治療前後のB細胞のBCRレパトア解析を実施した。その結果、RTX投与前後におけるBCRレパトアに差異が認められるものとあまり変化しないものを認めた。特に今年度はBCRレパトア解析を実施した症例のうち臨床経過が良かった1名が再発をきたしたため、その症例の解析を重点的に行った。まず、B細胞のCD10の免疫フェノタイプは再発に向けて若干の減少傾向が認められた。さらにこの症例について再発時のBCRレパトア解析を追加実施した。その結果としてRTX投与後寛解状態にあった時のBCRレパトアと再発時のBCRレパトアは類似するパターンを示していた。そこで、T細胞のTCRレパトアがRTX治療後に変化するという外部の報告もあることから、この症例についてTCRレパトアの解析を実施した。その結果、寛解時と再発の前後でTCRレパトアに差異が見られる傾向にあった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りに継時的な末梢血単核球のサンプリングを実施し、液体窒素中への細胞保存ならびにB細胞の免疫フェノタイプ解析を行っている。さらに15名の検体を解析することにより、これまでの結果を検証できた。 また、臨床情報の整理よりこれまでに再発を認める症例と現時点まで再発を認めない症例を区別できるようになったことから、両症例のB細胞免疫フェノタイプの比較やB細胞のBCRレパトア比較を行うことができている。 さらに再発時のBCRレパトア解析では興味深い結果が得られており、今後T細胞のTCRレパトア解析ならびに免疫フェノタイプ解析と併せて検討することにしており、一部はその予備検討まで行い次年度に向けた計画を立てることができた。
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今後の研究の推進方策 |
B細胞のBCRレパトア解析を実施した症例の中で再発を認めた症例について重点的に解析を進める予定である。一方で現時点で長期に再発を認めていない症例もあることから、両者での比較を行う。また、平成30年度に実施したTCRレパトア解析の予備検討において再発前後に差異を認めているので、これまでのB細胞の免疫フェノタイプ解析に加えて、T細胞の免疫フェノタイプ解析を追加解析する計画である。さらに平成30年度に実施したT細胞の免疫フェノタイプの予備検討では、T細胞の免疫フェノタイプにもB細胞のCD10同様に変化を認める分子があるようなので、経時的な解析ならびに多検体の解析を実施し、B細部の変化との関連性を解析する予定である。 次年度にマイクロアレイ解析を実施し、最終的には免疫関連遺伝子の発現状況、各種レパトア、免疫フェノタイプを統合的に解析し、ネフローゼ症候群におけるB細胞の関与について考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
臨床経過観察ならびに免疫フェノタイプ解析・BCRレパトア解析している症例において急遽の再発を認めたため、再発時におけるこれらの解析を優先した。当該症例についてBCRレパトア解析に加えてTCRレパトア解析を実施した。そのため幾つかの症例で実施予定であったマイクロアレイ解析について上記症例の再発後の経過も含めて解析した方が効率が良いと考え、次年度に実施する計画とした。
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