これまで長期に寛解状態を維持していた患者が再発をきたした。この患者はリツキシマブ(RTX)投与開始前にBCRレパトアの多様性が乏しく、RTX投与後寛解状態になった時点で再構築されたBCRレパトアの多様性は改善されていた。再発直後の末梢血サンプルを解析した結果、B細胞の再構築時に改善傾向が認められていたBCRレパトアは再発した直後も維持されていることがわかった。そこでT細胞のTCRレパトアがRTX治療後に変化するという外部の報告もあることから、BCRレパトアに加えてこの患者が再発した直後の末梢血のTCRレパトアを解析した。その結果、寛解状態にある時点のTCRレパトアより再発時のレパトアは多様性に乏しい状況にあった。その対照としてRTX治療後から同等の期間再発していない別の患者についてTCRレパトアを解析した。その患者においてはTCRレパトアの多様性は維持されている傾向にあった。 以上の結果からRTXの投与により末梢血中のB細胞が消失し20-30週の後にB細胞が再構築されるが、再構築されたB細胞のBCRレパトアの多様性が正常に形成されない場合は再発するリスクが高いと考えられた。また、TCRレパトア解析の結果から一旦構築されたB細胞のBCRレパトア変化に先立ち、TCRレパトアに変化が認められる可能性が示唆された。特にこれまでに微小変化型NS患者において抗体が腎組織に沈着していることは言われていないが、BCRの形成異常そしてTCRの形成異常が発症と何らかの関連性を持つことが示唆された。
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