研究課題
本研究は、川崎病に対する免疫グロブリン治療(IVIG)の優れた臨床効果(冠動脈炎症の速やかな抑制を介した心障害後遺症発生率の低下)に基づき、IVIG製剤の抗冠動脈炎症の分子作用メカニズムの解明を目指すものである。これまでの先行研究により、炎症性サイトカインTNF-aで刺激したヒト初代冠動脈血管内皮細胞(HCAEC)にIVIG製剤を添加すると、G-CSF、IL-6等、川崎病の病態形成に必須なサイトカイン発現のオートクライン作用による増幅を完全に抑制すること、そのメカニズムの一端に、これらサイトカインの転写誘導に働く転写因子C/EBPdの発現および機能抑制の関与を報告した。その後の検討により、IVIG製剤はHCAEC内に取り込まれ、細胞内小器官Yに高濃度で蓄積していること、さらにYに特異的に発現している分子Xに生化学的に結合していることを明らかにした。平成29年年度は、分子XがIVIGの抗冠動脈炎症効果の発揮に必須な役割を果たしていることを明らかにする目的で、分子Xの発現をsiRNA法によりノックダウンした場合、IVIGによる抗冠動脈炎症効果がキャンセルされるか否かについて検証した。その結果、いくつかのsiRNA transfection試薬を用いて検討したが、HCAEC細胞へのsiRNAによるノックダウン効率が最も高い試薬においても、control siRNAを導入した場合に比較して、蛋白発現レベルで約70%の抑制であった。しかしこの条件下においても、G-CSF、IL-6等サイトカイン、転写因子C/EBPdの発現抑制効果ともに部分的ではあるがキャンセルされた。transfection試薬を用いた検討では、導入効率に限界があることが分かったので、今後はレンチウイルスによる導入方法を検討し、分子XがIVIGによる抗冠動脈炎症効果の発揮に必須であることを示す予定である。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 1件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 4件)
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