研究課題/領域番号 |
17K10167
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
大内 秀雄 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 医長 (00517807)
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研究分担者 |
小倉 正恒 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (30532486)
大澤 麻登里 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, レジデント (40792180) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | HDLコレステロール / フォンタン / 抗酸化能 / コレステロール引き抜き能 / 成人先天性心疾患 |
研究実績の概要 |
令和1年度は成人フォンタン手術後患者207例を含めた成人先天性心疾患( ACHD)患者712例の血中HDLコレステロール(HDL-C, mg/dL)を測定し、また、主要な研究目的であるフォンタン術後患者40例を含んだ59例(未測定91例:現在、測定中である)ではHDLのコレステロール引き抜き能(CEC)と抗酸化能(ORAC)を測定し、臨床的な意義を研究している。第一に、全体では従来の報告通りACHD患者のHDL-Cは健常者より低いことを再確認し、若い年齢、高い体格指数、高い中心静脈圧、低い体血圧とベータ遮断薬の使用が独立に低いHDL-Cを規定していることが明らかとなった。第二に、HDL-Cの予後予測力も再確認した。すなわち、HDL-C測定後5.2年の経過観察で50例が死亡しており、低いHDL-Cは総死亡のリスクで(ハザード比:0.96、95%CI: 0.93-0.98、p = 0.0016)、その予後予測能力は確立した脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)濃度と独立していた。第三に、HDLの機能評価として、HDLのCECはACHD患者のHDL-Cと関係したが、病態との関連はなかった。一方、ACHD患者でHDLのORACはHDL-Cと関係していなかったが、高いBNP濃度、低い体血圧、そして肝機能障害の目安であるMELD-XIスコアといったACHDの重症度と有意に関係していた(p < 0.05 - 0.001)。これらの結果から、フォンタン術後患者を中心としたACHD患者のHDLはその濃度が低いという量的異常に加えてその質的異常も伴うことが明らかとなってきた。更に、HDL機能の抗酸化能の低下が右心不全を特徴とするACHD患者の特有な病態との関連が示唆される。未測定91例の解析が進め、この関連の詳細を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調に進んでいる。検体の測定(HDLの機能解析)がCOVID-19対応や測定技師の都合等で若干遅れているのみである。上記内容をヨーロッパ動脈硬化学会で受理され、2020年6月に発表予定であったが、COVID-19のため2020年10月に延期されている。
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今後の研究の推進方策 |
検体の収集はすでに終了している。現在、残りの検体でのHDLの機能を測定中である。解析が終了次第、その成果を学会発表、論文化を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
HDLの機能解析の進行が予測より遅れていることにより、出席予定していた学会出張が延期されたこと、同時に英文の論文化が遅れていることにある。 次年度には、速やかに残されたHDLの機能解析お進め、それを基に論文化を進める予定である。英文は2つ(成人先天性心疾患患者のHDLを中心とした脂質異常と臨床像の関係、フォンタン術後患者のHDL機能異常と臨床像の関係)を予定しており、その英文校正や印刷代、更に研究会等での発表に際しての費用に当てる予定である。
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