研究課題/領域番号 |
17K10171
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
佐々木 綾子 山形大学, 医学部, 准教授 (60333960)
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研究分担者 |
早坂 清 山形大学, 医学部, 名誉教授 (20142961)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 先天性中枢性低換気症候群 / PHOX2B遺伝子 / 遺伝子診断 |
研究実績の概要 |
先天性中枢性低換気症候群(congenital central hypoventilation syndrome: CCHS)の病因はPHOX2B遺伝子変異で,多くは4-13個のポリアラニン伸長変異(PARM)を,一部は非ポリアラニン伸長変異(NPARM)を有している. 今年度は,遺伝子変異の有無と臨床症状との関係について検討した.臨床的にCCHSが疑われ,遺伝子検査を施行した300症例を対象とし,臨床症状についてアンケート調査を施行した.特に1)無呼吸発作または低換気 2)高炭酸ガス血症 3)ヒルシュスプルング病または自律神経症状の有無について検討した.PHOX2B遺伝子変異は,136例(PARM 124例,NPARM 12例)に検出し,164例には変異は認めなかった. 遺伝子変異を有する136例では,無呼吸発作または低換気は133例(98%)に,高炭酸ガス血症は105例(77%)に認め,ヒルシュスプルング病またはヒルシュスプルング病類縁疾患は45例(33%),腹部膨満と便秘症は16例(12%),徐脈・頻脈等は19例(14%),体温調節障害は2例(1.4%),瞳孔異常は4例(3%),胃食道逆流症は4例(3%)に認めた. 遺伝子変異を検出出来なかった164例では,無呼吸発作または低換気は130例(79%)に,高炭酸ガス血症は65例(40%)に,ヒルシュスプルング病またはヒルシュスプルング病類縁疾患は5例(3%),腹部膨満と便秘症は7例(4%),徐脈・頻脈等は12例(7%),体温調節障害は9例(5%),胃食道逆流症は15例(9%)に認めた. 遺伝子変異を有する症例では,検討した症状が高頻度に認められた.しかし,25PARMを有する症例では,症状も非典型的で鑑別は困難であり,遺伝子診断を施行することが重要である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年間約30症例の検査申し込みがあり、約半分に遺伝子変異を検出している。ガイドライン作成において、鑑別診断を行うことが重要であり、そのための調査として詳細な臨床症状やアンケート調査により検討できている。
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今後の研究の推進方策 |
無呼吸発作・低換気,高炭酸ガス血症,またヒルシュスプルング病や自律神経症状の有無をチェックすることで,ある程度の鑑別は可能であるが、25PARMは一般的に軽症であり,無呼吸発作が新生児期ではなく,乳幼児期や成人になってから発症する症例もあり,合併症も少ない.今回の検討でもヒルシュスプルング病・ヒルシュスプルング類縁疾患の合併は25PARMには認められなかった.また,感染や麻酔を契機に発症することが知られている.今回,変異を認めなかった症例では先行感染が15例で認められ,臨床症状や経過からは鑑別は困難と考えられる.そのため,遺伝子診断を施行し,鑑別診断を進めることが重要と考える.今後も症例を集積し、遺伝子検索を行い、臨床症状やアンケート調査で鑑別診断につながる情報を検討していく。 また,少数ではあるが,遺伝子変異を認めなかった症例には,明らかにCO2応答換気反応が低下していた症例もあり,今後検討していく課題である.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の使用額が当初の予定額よりも使用せずに研究が進められたために次年度使用額が生じた。次年度も症例を集積し、遺伝子検索を行い、臨床症状やアンケート調査で鑑別診断につながる情報を検討していく。 また,少数ではあるが,遺伝子変異を認めなかった症例には,明らかにCO2応答換気反応が低下していた症例もあり,今後検討していく課題であり、検索を進めていく。
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