研究課題
「出生前の環境は, 胎児や新生児の発生発達過程に影響を及ぼし, 生後数年から数十年経過した後の児の健康を左右する要因となる」ことが疫学研究によって示され、Developmental Origin of Health and Disease (DOHaD)という概念が生まれた。この考えは出生前の環境改善によって児の生涯の疾患リスクを低減できる可能性を示唆する。しかし出生前のどのような環境要因が問題となるのか、またどのような指標を用いれば疾患リスクを評価できるのかは明らかではない。さらに文化・社会および人種の違いにより国別に異なる環境改善策が必要であるため、現況の日本人集団を対象としたデータ解析が重要である。本研究では主に3つの側面からこの課題にアプローチした。第1に、自ら立ち上げた出生前コホート研究の100を超える母児ペアについて、臨床データ、妊婦の食事、生活リズムやメンタルヘルス等の調査情報及び母体血・臍帯血・臍帯・新生児マススクリーニング時の濾紙血等の生体試料を取得し、DNAメチル化やmiRNAなどのエピゲノムと様々な因子との関連解析を行った。第2に、日本の一般集団を対象とした使用済み新生児マススクリーニング濾紙血検体を用いたエピゲノム解析の有効性を評価した。先天性代謝異常スクリーニング検査後にも、ろ紙には血液が少量残存しているが現在使用されずに廃棄されている。残存血液は2次的なゲノム・エピゲノム解析に十分な質と量を保持していることを明らかにした。第3に、周産期電子カルテ情報を用いて胎児発育の時系列データを後方視的に解析し、日本人集団に限っても胎児発育トラジェクトリーには複数のパターンが存在することを初めて見出した。また、妊娠中体重増加量の出生体重増加に対する効果は一様ではなく、特に小さい児の場合には、母体の妊娠中体重増加が出生体重を上げる効果が低いことを明らかにした。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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http://www.tmd.ac.jp/ppepi/index.html