研究課題/領域番号 |
17K10180
|
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
下野 隆一 香川大学, 医学部, 准教授 (60404521)
|
研究分担者 |
藤井 喬之 香川大学, 医学部, 助教 (00746696)
田中 彩 (西村彩) 香川大学, 医学部, 助教 (30459200)
形見 祐人 香川大学, 医学部附属病院, 助教 (50791224)
加治 建 鹿児島大学, 鹿児島大学病院, 特任教授 (50315420)
家入 里志 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (00363359)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 短腸症候群 / 壊死性腸炎 / 細胞保護 / Guar Gum |
研究実績の概要 |
本実験の背景と目的: NEC(壊死性腸炎)は低出生体重児に多く発症し、腸粘膜の虚血性壊死を主病変とする疾患で、NECの発生原因の真のメカニズムについて は十分解明されていない。一方、NECになった患児は救命されても腸管が極端に短い短腸症候群になることが多く、消化管が長期間使用できないため栄養障害や それに付随する肝機能障害(IFALD: Intestinal Failure Associated Liver Dysfunction)を起こし、生命予後のみならず成長障害も引き起こす。本研究はNEC病 態に関連の深い短腸症候群ラットモデルに対する希少糖などの細胞増殖因子の影響を調べることを目的とした。短腸症候群ラットモデルの作成:短腸症候群ラッ トモデルを作成することから本実験はスタートした。ラットを開腹の後、腸管を切断し、そのまま吻合、腹壁を閉腹するいわゆるsham群と空腸-回腸を70%切除後、腸管を端々吻合する群とに分類した。さらにそれぞれに対して細胞保護作用のあるGuar Gumを投与する群を作成した。この4群について本年は腸管粘膜障害とGuar Gumによる粘膜障害ついて検討した。結果:短腸症候群ラットを用いても実験にて70%切除した群はsham群と比較して有意に吻合部付近の炎症による粘膜脱落所見が残存していた(HE染色およびCD45)。またGuar Gum投与群ではこの炎症所見が有意に軽減した。それに応じて腸内細菌叢の是正と短鎖脂肪酸の増加傾 向が見られたため、Guar Gumの抗炎症効果が真に腸内細菌叢を通じての変化であることが示唆された。考察:本短腸症候群モデルに対するGuar Gumの効果は腸内細菌叢を是正することで腸管の炎症性変化を軽減することが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた短腸モデルへの希少糖投与に代えてGuar Gumによる腸管の炎症性変化に対する細胞保護作用を見る実験となったが、組織学的にだけで無く、腸内細菌叢の変化からもGuar Gumの細胞保護のメカニズムを示唆する結果が得られた。主となる研究のうち動物モデル作成と組織学的および細菌学的解析は終了している。この結果については今年度までに国内外の学会および国際英文誌上にて発表を行った。
|
今後の研究の推進方策 |
Guar Gumの抗炎症効果は腸管組織と腸内細菌叢の変化に因果関係がありそうなところまでは進んだが、統計学的に有意といえるところまでは進んでおらず、今後は対象数を増やして統計学的に腸内細菌相変化が関与していることを証明したい。また、本実験にて採取した血液・生化学データの解析と解釈(特にサイトカインの変化)、について研究を進め、抗炎症作用が組織学的と細菌学的結果との間にどのように関与しているか、研究を進めたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
主となる研究のうち動物モデル作成と組織学的および細菌学的解析は終了している。この結果については昨年度までに海外の学会および論文にて発表を行った。しかし、本実験にて採取した血液・生化学データの解析と解釈ができておらず、それに加えて組織学的および細菌学的結果との因果関係の証明およびその発表の機会が昨年度中に終了できない見通しとなった。そのため補助事業期間延長を申請せざるを得ない状況となった。
|