研究課題
本研究は水痘ワクチン株で変異のある遺伝子と共通の機能を持つサイトメガロウイルス(CMV)遺伝子の比較解析を通じて、CMVワクチン開発へと繋げる試みである。これまでの研究により水痘ワクチン株で変異のある遺伝子と共通の構造を持つCMV遺伝子を同定してきた。今年度は他のヘルペスウイルスについて、機能的な相同性を持つ遺伝子の有無を調べた。特に宿主ユビキチンE3リガーゼであるNedd4ファミリーとの相互作用を中心に検討した。その結果、Nedd4ファミリーの制御はカポジ肉腫ウイルスを除いたヒトに感染するヘルペスウイルスに共通していることが分かった。分子間のアミノ酸配列の相同性は低いが、Nedd4ファミリーとの相互作用に必要な領域や膜貫通ドメインは保存されていた。一方で、個々の遺伝子に特有の現象も認められたことから、個々のウイルスがNedd4ファミリーとの相互作用を利用し、自身の生存や免疫からの回避に利用していると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
計画通りに研究が進行している。
所属機関の異動に伴い、モルモットサイトメガロウイルス(GPCMV)の組換え実験系と動物実験系を利用することが可能となった。GPCMVはヒトと同様に経胎盤感染を起こすことから、先天性CMV感染のモデルとして利用されるウイルスである。ゲノム構造の検討から、GPCMVが持つNedd4制御分子の存在を確認できている。今後は当該分子がNedd4を制御することについての生化学的な裏付けを行い、組換えGPCMVを利用して当該分子が病原性に与える影響を評価する。さらに水痘ワクチンと類似の変異を導入した組換えGPCMVを作成し、モルモット生体内での組換えGPCMVの挙動を明らかにする予定である。
本年度は「物品費」686,948円、「旅費」234,920円、「人件費・謝金」35,208円、「その他」238,120円、間接経費360,000円を計上した。いずれも本研究の遂行に必要な経費であり、適正な支出であると考えている。当初は「人件費・謝金」を計上していなかったが、論文投稿に伴う英文校正等による支出を計上した。また、次年度使用額4,804円を計上したが、これは翌年度請求額と合わせて、物品費などに使用する予定である。
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Sci Rep.
巻: 8(1) ページ: 4447
10.1038/s41598-018-22682-2.