研究課題/領域番号 |
17K10188
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
谷田 任司 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30589453)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | LRPGC1 / ERRγ / TFAM / ミトコンドリア / 乳酸 |
研究実績の概要 |
本年度は、代表者らがラット視床下部より同定した乳酸応答分子LRPGC1(Lactic acid-responsive form of PGC1α; PGC1vfから改称)の役割について、分子レベルでの解析を進めた。前年度までの解析で、LRPGC1は乳酸に反応して核移行を示し、核内で転写因子ERRγと直接的に相互作用した後TFAM(ミトコンドリア転写因子A)の遺伝子発現を誘導し、その結果ミトコンドリア機能が亢進して乳酸代謝が促進される、という一連のメカニズムを明らかにしている。一方、TFAM遺伝子の発現誘導メカニズムは不明であった。そこで本年度は、LRPGC1/ERRγシグナルが転写レベルでTFAM発現を活性化するのか否かの検証を行った。in silicoでの解析より、ラットTFAM遺伝子の転写開始点から上流約0.5 kまでのプロモーター領域に2ヶ所、ERR応答配列に類似したエレメントを見出した。そこで、当該0.5 k領域についてレポーターアッセイを行った。COS-1細胞にLRPGC1とERRγを外因性に発現させると、TFAMプロモーターにおける転写活性が有意かつ相乗的に上昇することが分かった。更に、見出された2ヶ所のERR応答配列の類似エレメントのうち、転写開始点から近位側にタンデム点変異を加えても転写活性に変化は無かったが、遠位側にタンデム点変異を加えると転写活性の劇的な低下が認められた。以上より、LRPGC1/ERRγシグナルはプロモーターを活性化することで直接的にTFAM発現を誘導することが判明すると共に、LRPGC1/ERRγシグナルに反応する新たなERR応答配列をTFAMプロモーター上に同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
追加実験等に当初想定していた以上の時間が掛かっており、投稿論文がまだ受理されていないので、補助期間の1年延長を申請した。現在論文を修正中であり、この1年で完遂させたい。
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今後の研究の推進方策 |
乳酸値が上昇した際にがどのように転写が活性化され、乳酸代謝が促進されるかのメカニズムを分子レベルで明らかにした。前年度は分子レベルでの解析に労力を掛けたので、次年度(最終年度)はこのシグナル経路のニューロンの分化や成長における役割を明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に国際学術誌に投稿した論文が現在修正中でまだ受理されていない。即ち、計画していた研究がまだ終了していないため次年度使用額が生じた。この額は引き続き論文の追加実験や修正、掲載料等に用いる予定である。
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