研究課題
エネルギー代謝制御因子として知られる核内受容体,エストロゲン関連受容体(ERR)は3つのサブタイプα,β,γを持つ内在性リガンドの不明なオーファン受容体であり,リガンド非依存的な転写制御機構を有する。これまでに,脳での発現量の多いERRγの脳における詳細な分布をラットを用いて免疫組織化学的に明らかにし,また,視索前野におけるエストロゲン受容体αとの共局在を示した。本年度は,ERRの合成リガンドで逆作動薬(inverse agonist)であるdiethylstilbestrol(DES)を用いてERRの新たな転写抑制機構を明らかにしたのでその概要を示す。eYFPにより蛍光ラベルしたERR(α,β,γ)はいずれのサブタイプもDESの添加により5~20分以内に核内に顆粒状のクラスターを形成し始め,1時間後には可動性が低下することがCOS-1細胞を用いた生細胞イメージングおよび光褪色後蛍光回復(FRAP)法により判明した。核内に形成された各々の顆粒状クラスターは,転写抑制因子かつ核マトリクス関連タンパクとして知られるscaffold attachment factor B1(SAFB1)と共局在したことから,各サブタイプのERRはDESと結合するとSAFB1を介して核マトリクスと相互作用し,その結果可動性が低下することが強く示唆された。DES未添加な状態でもERRはSAFB1と相互作用するが,DES添加後にその相互作用が顕著に促進されることが共免疫沈降法により確認された。一方,SAFB1の過剰発現によりERRの応答配列における転写活性は有意に低下したことから,SAFB1はERRの転写抑制因子として働くと共に,ERRの転写抑制にはSAFB1と相互作用する核内の顆粒状クラスター形成ならびに可動性の低下が関与することが明らかとなった。
代表者は2021年4月に京都府立医科大学から大阪府立大学へ異動。
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Tissue Engineering, Part A
巻: - ページ: -
The FASEB Journal
巻: 34 ページ: 13239~13256
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Journal of Orthopaedic Research
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http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/anatomy1/
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https://researchmap.jp/t.tanida
https://orcid.org/0000-0002-0864-2433