研究実績の概要 |
低出生体重児の行動発達関連遺伝子のエピジェネティクス変化と子宮内、新生児期のストレスの関連を明らかにすること目的とした。同意が得られた極低出生体重児26名の33サンプル(臍帯血N=24,退院時または修正40週時の生後血N=9)で、ストレス反応に関連するヒトグルココルチコイドレセプター(GR)遺伝子(NR3C1)、セロトニントランスポーター(5HTT)遺伝子(SLC6A4)のメチル化率の同時解析を行った。 臍帯血の結果:在胎期間とNR3C1 CpGのメチル化率平均値との相関(Spearmanρ=-0.018, p=0.934)、SLC6A4 CpGメチル化率平均値との相関(ρ=-0.381, p=0.066)ともに有意ではなかった。出生体重とNR3C1 CpGのメチル化率平均値の間にはρ=-0.537,p=0.007の負の相関を認めた。SLC6A4 CpGメチル化率平均値との間には有意な相関は認めなかったが、CpG#243,#244,#251で有意な負の相関を、CpG#236とは有意な正の相関を認めた。出生前や母体要因のうち、切迫早産ではSLC6A4 CpGメチル化率平均値が高値で、NR3C1 CpGのメチル化率平均値が低値であった。逆に妊娠高血圧症候群はSLC6A4 CpGメチル化率平均値が低値であった。SFD児はNR3C1 CpGのメチル化率平均値が高値であった。 臍帯血と生後血の比較:NR3C1 CpGのメチル化率は生後血で有意に増加し、SLC6A4 CpGではCpG#233,#234,#236のみ有意な増加を認めた。 低出生体重であるほどストレス反応を制御するGR遺伝子および5HTT遺伝子の一部CpGのメチル化率が出生時に増加しており、生後のストレス反応や行動発達に影響している可能性が示唆された。メチル化変化と後の行動発達特性との関連については、長期的な観察が必要である。
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