研究課題/領域番号 |
17K10201
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所) |
研究代表者 |
西海 史子 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所), 免疫部門, 流動研究員 (60599596)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | U. parvum / ER ストレス |
研究実績の概要 |
わが国では年間 6 万人余りが早産(妊娠 22 週から 37 週未満)で出生し、早産率は約 6% である。早産児は呼吸器障害、神経障害などの合併症を伴うことがあるが、その原因の約半数に細菌感染や、病理的な絨毛膜羊膜炎(CAM)が認められる。感染性早産は臨床的に抗菌薬の効果は低くその制御は今尚困難である。当センター流早産胎盤における Ureaplasma spp.の分離頻度は42%であり、CAM の起因微生物として最も重要な細菌の一つである(Namba et al., Ped Res, 2010)。 糖鎖結合タンパク質であるガレクチンが小胞を損傷する病原体の感知とオートファジーに関与している可能性がある事が報告されている。これまでの検討で宿主細胞内に取り込まれた Ureaplasma parvum (U. parvum)によってガレクチンの集積が引き起こされるか調べたところ、感染細胞においてガレクチン-3, 8, 9sの集積が起きているのが観察されたことから ER の損傷が起きているか調べた。その結果、ER ストレス反応 (UPR) が引き起こされると発現上昇が確認される BiP, PERK の発現上昇、IRE1α のリン酸化が認められた。さらに ER ストレスに関与している miRNA の発現について調べたところ、miR-211 や miR-30C-2* の発現量が増加しているのが示された。これらの結果から宿主細胞に U. parvum が感染することによって ER ストレス関連因子の発現量の増加が認められたことから、ER ストレスが引き起こされいることが示唆された。ウレアプラズマのゲノム DNA 解析の結果、機能未知遺伝子がいくつかあり、その中でも細胞膜障害毒素の機能を持つ遺伝子について解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
早産胎盤由来の U. parvum 臨床分離株は感染後、宿主細胞内の ER に局在していることが示され ER の膨化が電子顕微鏡で観察された。小胞が損傷すると誘導されるガレクチンの集積が観察されたことから、U. parvum 感染によって ER ストレスが引き起こされていることが示された。ER ストレスに関与しているタンパク質の発現が U. parvum 感染によって上昇しているか Western blotting で確認したところ、BiP, PERK の発現上昇、IRE1α のリン酸化が確認された。ER ストレスによって発現上昇していた PERK とIRE1α の発現に関与していると考えられている miRNA-211,miR-30C-2* の発現について解析したところ、コントロール細胞と比較して U. parvum 感染細胞で miRNA の発現量が増加しているのが観察された。ウレアプラズマのゲノム DNA 解析で、得られた機能未知遺伝子 (U403) の解析を行うために、培養細胞にこの遺伝子を過剰発現させたところ細胞膜障害性を示し、細胞死が引き起こされることが示された。この機能未知遺伝子、U403 を安定発現する細胞株を作製し U. parvum が常時感染しているのと同じような状態にして ER ストレス関連因子の発現上昇が確認されるか調べたところ、U. parvum を感染させた時と同じタンパク質の発現上昇、miRNA の発現上昇が示された。これらの結果から、機能未知遺伝子 U403 が宿主細胞に対して細胞障害性の機能を示していることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
U. parvum 感染細胞で PERK の発現上昇が確認され、miRNA-211 の発現が誘導されていることが示された。miR-211 の発現が誘導されるとアポトーシス促進性の転写因子 chop の発現を抑えていることが報告されている。ウレアプラズマ由来機能未知遺伝子の U403を安定発現する細胞株を作製し、miR-211 の発現がコントロール細胞と比較して上昇しているか Digital PCR で調べる。U403 を安定発現する細胞で miR-211 の発現上昇が確認された場合、antisence miR-211 を用いて miR-211 の発現を抑えるとアポトーシス関連因子の発現が誘導されるか検証する。さらに U. parvum 感染によってアポトーシスの誘導が抑えられると感染細胞の不死化が起きて癌が誘導されるのではないかと考えられることから、U. parvum 感染細胞と U403 を安定発現する細胞を用いて抗癌剤に対する抵抗性を示すか調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度にマウスを購入する予定が有った為、残額を次年度に使用するようにした。 今年度の研究費使用計画は機能未知遺伝子の機能解析を行うために必要な消耗品やマウス等購入費用として 60 万円。 マイコプラズマ学会および細菌学会に参加発表する為の参加費及び旅費として 20 万円。人件費・謝金として 10 万円、その他諸経費として 10 万円。
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