研究実績の概要 |
わが国では年間 6 万人余りが早産(妊娠 22 週から 37 週未満)で出生し、早産率は約 6% である。早産児の原因の約半数に細菌感染や、病理的な絨毛膜羊膜炎(CAM)が認められる。感染性早産は臨床的に抗菌薬の効果は低くその制御は今尚困難である。当センター流早産胎盤における Ureaplasma spp.の分離頻度は42%であり、CAM の起因微生物として最も重要な細菌の一つである(Namba et al., Ped Res, 2010)。 U. parvum感染細胞とU403安定形質転換細胞株のマイクロRNAライブラリーのスクリーニングにより、ERストレス下でのアポトーシスカスケードを抑制する制御因子としてmiR-211とmiR-214を同定した。同定したmiR-211, miR-214のinhibitorを用いてこれらの発現を抑えるとアポトーシス関連因子の発現が誘導され、アポトーシスが引き起こされるか調べた。miR-211, miR-214 inhibitorをU403安定発現細胞に導入するとアポトーシスの誘導が引き起こされているのが確認できた。U. parvum感染子宮頸がん細胞株はアクチノマイシンD処理に対して抵抗性を示し、U403安定形質転換細胞株はX線照射、シスプラチン、パクリタキセル、アクチノマイシンD処理に対して抵抗性を示した。また、ヌードマウスでU403を安定発現する子宮頸がん異種移植実験では、シスプラチンおよびパクリタキセルに対する耐性を獲得した。これらの知見は、in vitroでの感染継続の新規なメカニズムと、最小の微生物の一つであるUreaplasmaによる子宮頸がん悪性腫瘍のエンハンサー活性の可能性を示唆するものであった。
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