研究課題
全身性強皮症は、皮膚や臓器の線維化(硬化)と血管異常、免疫異常を生じる原因不明の難病である。血管異常(血流低下)による低酸素よって誘導される酸化ストレスや免疫異常による細胞障害によって、皮膚の線維芽細胞や血管内皮細胞がダメージを受けてアデノシン3リン酸(ATP)が細胞の外に放出される。細胞外ATPはdamage-associated molecular pattern molecules (DAMPs:ダメージ(傷害)関連分子パターン)と呼ばれ自己由来の起炎症性因子として知られている。最近では、ATPは細胞破壊の結果としてではなく、様々な細胞外からの刺激によって生理的、能動的に放出される細胞間伝達物質として機能することが明らかになってきた。しかし、全身性強皮症の皮膚硬化や血管障害の病態における細胞外ATPの役割は明らかになっていない。そこで、強皮症患者由来線維芽細胞やブレオマイシン誘導皮膚線維化マウスモデルを用いて、細胞外ATPによる皮膚硬化(線維化)や血管障害への関与について、そしてそのメカニズムを明らかにすることを目的として研究を行っている。強皮症患者由来線維芽細胞を用いて、ATP刺激によってIL-6やI型コラーゲンが産生されるメカニズムを明らかにした。また、強皮症の線維化を促進させるエンドセリンI、ノルエピネフリンとATPの共刺激による線維化への影響とメカニズム(細胞内シグナル)を明らかにした。ATP阻害剤を用いた皮膚線維化に対する治療効果についても新たに見出した。
1: 当初の計画以上に進展している
予定していた研究は順調に遂行できているため。
これまでに得た研究成果を発展させて、予定している研究を遂行する。
理由:予定していた予算に基づき使用していたが、未使用の予算が生じたため。使用計画:予定している研究を遂行するための物品の購入に使用する。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Journal of Investigative Dermatology
巻: 139 ページ: 890-899