研究課題/領域番号 |
17K10207
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
平子 善章 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (50377909)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ヘミデスモソーム / コラーゲン |
研究実績の概要 |
本研究計画では先天性表皮水疱症の表現型の背後に存在する特有の病理の分子メカニズムをヘミデスモソーム機能に注目して明らかにすることを目的としている。2019年度は以下の実績をあげた。 1)インテグリンβ4鎖もしくはBP230を欠失したDJM-1細胞株をゲノム編集により作製した。 2)プレクチン欠失DJM-1細胞はヘミデスモソームを全く形成できない。この欠失細胞の基底側に沈着しているラミニン332を観察したところ、親株とは異なる沈着パターンを示していた。一方、インテグリンβ4欠失DJM-1細胞は、プレクチン欠失株よりも親株に近いラミニン332沈着パターンを示した。 3)BP230のexon1とexon2をそれぞれターゲットとしたゲノム編集により、BP230欠失DJM-1細胞を作製したところ、exon2をターゲットとした細胞ではBP230タンパク質が検出されなくなったが、exon1をターゲットとするゲノム編集では、親株とほぼ同量のBP230タンパク質が検出された。しかし、exon1に変異をもつ細胞ではBP230のHDへの組み込みが観察されなくなった。 4)ラット表皮由来の株細胞FRSKでは、数日で成熟したI型ヘミデスモソームが形成される。しかし、遺伝子導入が容易ではない点が、これまでこの細胞を用いた研究を困難にしていた。そこで、新しく発売されたトランスフェクション試薬を複数種試したところ、promega社の試薬であるviafectがFRSK細胞に対して1割程度のトランスフェクション効率を示すことがわかった。そこでviafect を使用して、XVII型コラーゲンもしくはBP230を欠失したFRSK細胞株をゲノム編集により作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画ではヒト扁平上皮がん由来のDJM-1細胞を対象にゲノム編集をおこない、モデル細胞を作成する予定だ った。しかし、その後、よりI型ヘミデスモソームの研究に適したラット角化細胞由来の株細胞FRSKに適用できるトラ ンスフェクション試薬が見つかったため、一部のHD構成タンパク質遺伝子のゲノム編集はDJM-1細胞に加えてFRSK細胞 でもおこなうことにした。そのために研究計画がやや遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
XVII型コラーゲン欠失DJM-1細胞とインテグリンβ4欠失DJM-1細胞からHD画分を単離し、これらと自己免疫疾患患者血清との反応性を調べる。I型ヘミデスモソーム集合におけるXVII型コラーゲンの役割については、XVII型コラーゲンの細胞質ドメインの果たす役割に着目して、DJM-1細胞とFRSK細胞を用いた実験結果をまとめている。また、XVII型コラーゲンのリン酸化とヘミデスモソーム解体との関わりを解明するために質量分析によるリン酸化アミノ酸の同定を行う予定である。プレクチン欠失細胞におけるラミニン332の沈着パターン変化については、インテグリンβ4鎖欠失細胞との相違に注目して、解析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の実験において、よりI型ヘミデスモソームの研究に適したラット角化細胞由来の株細胞FRSKを使用することにしたため、計画が遅延し、次年度使用額が生じることになった。繰り越した研究費は、主に細胞培養に必要な消耗品購入と、XVII型コラーゲンのリン酸化解析のための費用に充てられる。
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