2020年度の実験では、容易にI型ヘミデスモソームを形成するラット表皮由来の株細胞FRSKを主に用いて、次の研究成果を得た。 1)2019年度にXVII型コラーゲン遺伝子もしくはBP230遺伝子を標的としたゲノム編集をおこなったFRSK細胞から限界希釈法によりXVII型コラーゲンもしくはBP230を欠失したFRSK細胞クローンを単離した。いずれのクローンでも細胞の伸展や接着には大きな異常は認められなかった。 2)XVII型コラーゲン欠失FRSK細胞では、I型ヘミデスモソーム様の接着構造の形成が観察されなくなった。このI型ヘミデスモソームの形成不全はヒトXVII型コラーゲンの発現により、回復した。この結果は、私たちが初年度にXVII型コラーゲン欠失DJM-1細胞を長期培養した際に観察した結果とほぼ同様である。さらに、細胞膜に近接したコラーゲンドメイン以外の細胞外部分を欠いたXVII型コラーゲン変異体を欠失細胞に発現させたところ、全長タンパク質を発現させた場合とほぼ同様にI型ヘミデスモソーム形成能は回復した。このことは細胞質部分とともに、コラーゲンドメインの重要性を示唆している。 3)蛍光抗体染色法によりBP230欠失FRSK細胞を観察したところ、I型ヘミデスモソーム様の構造が形成されていた。このことから、I型ヘミデスモソーム構造への構成タンパク質の集合には、XVII型コラーゲンがより重要な役割を果たしていることがわかった。 4)DJM-1細胞およびFRSK細胞を用いて、EGF刺激下でのヘミデスモソーム構成タンパク質のリン酸化部位の同定を質量分析により試みた。
|