Ovo-like 1(OVOL1)は、アトピー性皮膚炎のゲノムワイド関連解析によって、責任遺伝子の1つとして同定されたが、その機能について不明な点は多い。申請者は、アトピー性皮膚炎の皮膚バリア機能障害におけるOVOL1の役割を明らかにしたいと考えている。申請者はこれまでに、OVOL1は表皮細胞に高く発現すること、OVOL1の発現は芳香族炭化水素受容体(Aryl hydrocarbon Receptor:AHR)のリガンドによる刺激で増加すること、AHRは活性化されると皮膚バリア機能で重要とされるフィラグリン(Filaggrin:FLG)の発現を増加させること、を明らかにしており、これらの結果に基づき、表皮細胞においてAHRはOVOL1を介してFLGをはじめとする皮膚バリア機能に重要なタンパクの発現を調節しているのではないかという仮説を立てた。さらに、アトピー性皮膚炎の病態では、このOVOL1の機能が低下することで皮膚バリア機能障害を来すのではないか考え、これらの仮説を証明したいと考えて研究を進めた。その結果、AHRはOVOL1を介してFLGの発現を調節することを明らかにした。本研究の成果は、アトピー性皮膚炎の病態解明の一助になると考えられた。
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