表皮角化細胞特異的mDia1/3欠損マウス(K5Cre-mDia1/3KOマウス)及び表皮角化細胞特異的ROCK1/2欠損マウス(K5Cre-ROCK1/2KOマウス)における皮膚の状態を、肉眼的、生理学的、形態学的、及び分子生物学的に検討した。K5Cre-mDia1/3KOマウスでは肉眼的に明確な変化は認めなかったが、エバンスブルーを用いた物質透過性試験によって角層・表皮の物質透過性が亢進していた。角層透過性バリアを担う角質細胞間脂質膜の形成において重要な脂質代謝に関連する酵素群(スフィンゴミエリナ-ゼ、グルコセレブロシダーゼ、セラミダ-ゼ)のmRNA発現をリアルタイムPCR法で解析・検討したところ、コントロールマウスとの明確な違いは認めなかった。角層の電子顕微鏡的解析では、K5Cre-mDia1/3KOマウスにおける層板顆粒の分泌低下が、定常状態と角層アリア傷害後の検体で示唆された。一方、薄層クロマトグラフィー法による角層における脂質の解析では、K5Cre-mDia1/3KOマウスではコントロールマウスと比較して単位面積当りのセラミド量が増加している傾向を認めた。K5Cre-ROCK1/2KOマウスでは、自然発症性の皮膚炎が生じた。炎症が自然発症したK5Cre-ROCK1/2KOマウスの皮膚組織では、厚い鱗屑の付着、表皮肥厚、炎症細胞浸潤、真皮における肥満細胞の増加が観察され、血清におけるIgEやTSLPのIL-6レベルの上昇も検出された。更に、分化関連蛋白(インボルクリン、フィラグリン、ロリクリン)の発現を免疫組織染色で観察したところ、発現分布の異常(顆粒層部分以外での発現)や顆粒層付近での発現量の低下が示唆された。以上の結果から、Rho関連蛋白であるmDiaやROCKが透過性皮膚バリア機能の構築や維持において重要な役割を担い、皮膚炎症にも関与することが示唆された。
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