Hemicentinは線虫において初めて同定された分子量60万の細胞外マトリックスタンパク質である。線虫には1種類であるが、ゼブラフィッシュ・マウス・ヒトではhemicntin 1とhemicentin 2が存在する。近年ゼブラフィッシュの遺伝解析から、その変異がヒトの遺伝性疾患であるFraser syndromeとその類似疾患の原因遺伝子であることが示唆された。最近、hemicentin 1とhemicentin 2のノックアウトマウスの解析結果が報告されたが、どちらのノックアウトマウスも顕著な欠陥は認められず、マウスの発生・形態形成には必須でないと考えられる。 本研究では、hemicentin 1とhemicentin 2をリコンビナントタンパク質として発現・精製し、それらの性状の解析を遂行してきた。どちらのhemicentin も高分子の凝集体を形成するために精製は難しかったが、少量ながら精製することができた。そこで、種々の細胞外マトリックスタンパク質との結合性を調べた結果、これまでのところ、nidogen-1とnidogen-2に対してのみ結合性が確認できている。一方、hemicentinは高分子であるので、それらを構成するドメインを発現させて、それぞれに対する抗体を作製した。マウスでのhemicentin 1の発現解析については、Miner博士と共同研究を行い、すでに発表している。hemicentin 2についてはこれまで作製したヒトタンパク質に対する抗体ではマウス組織での発現解析に不適だったので、新しい抗体を作製した。
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