研究課題/領域番号 |
17K10219
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
山西 清文 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (10182586)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アラーミン / トランスグルタミナーゼ / 角化症 |
研究実績の概要 |
外界からのさまざまな侵襲や皮膚のバリア障害によって表皮がストレスに曝されると、角化細胞から複数の警告因子(アラーミン)が放出され、生理的な修復反応や自然免疫系の炎症反応が誘導される。これらの反応の持続は、皮膚の自律的な制御機構を越えて難治性皮膚疾患の病態に深く関与すると推測される。本研究は、皮膚における警告因子によって活性化される分子システムの探索を通じて皮膚疾患の病態を理解することを目的とし、新たな治療標的分子の開発を目指している。 平成30年度は、アラーミンが病態に関与する可能性のある角化症について遺伝子解析を実施した。対象は掌蹠角化症4例、先天性魚鱗性1家系で、exome解析等により原因となる遺伝子変異を同定した。さらに、これまでに遺伝変異を同定できた角化症の組織を用いて、アラーミンとして発現量の多いS100A8/S100A9コンプレックス(カルプロテクチン)の発現について検討した。その結果、AQP5およびSLURP1変異を持つヒト角化症の表皮でカルプロテクチンの発現が増強することを見いだした。また、角化症モデルであるトランスグルタミナーゼ1(Tgm1)欠損マウスおよび対照野生型マウスの表皮で発現する遺伝子のトランスクリプトームを比較し、Tgm1欠損に伴って発現が誘導される新たな遺伝子ファミリーを検出した。この遺伝子ファミリーの表皮における機能については報告がなく、表皮の恒常性維持に関わる新たなシステムの手がかりになると考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
動物実験施設の新築移転により、マウスの生育が悪く従前に回復するまで8か月を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
角化症モデルであるトランスグルタミナーゼ1(Tgm1)欠損マウスおよび対照野生型マウスの表皮で発現する遺伝子のトランスクリプトーム解析から、Tgm1欠損に伴って発現が誘導される新たな遺伝子ファミリーを検出し、この遺伝子ファミリーの表皮における機能は不明であることから、今後、表皮の恒常性維持に関わる新たなシステムの解明に向けて、ヒト角化症および角化症モデルマウス表皮を対象として、この遺伝子ファミリーの表皮における機能の探索を分子生物学的あるいは形態的研究手法により推進する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験施設の移転に伴い、マウスの生育が悪く、そのため、飼育経費に未使用額が生じた。現在、生育は順調であり、今後、2018年度に繁殖できなかった匹数を確保して実験を実施する計画である。
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