発汗異常を伴う炎症性皮膚疾患の探索と,疾患の発汗障害病態解析を継続している。これまでに本研究課題で,痒疹(Arch Dermatol Res. 2019, Eur J Dermatol. 2019),アミロイド苔癬(Eur J Dermatol. 2019)で発汗障害があり,汗腺と汗管かれの汗の漏れがあることを観察報告した。コリン性じんましんでも同様の検討をおこない,汗の漏れがあることを突き止めた。その病態について論文作成し投稿中である。現在,アトピー性皮膚炎(AD)を対象に発汗障害を検討している。皮疹と発汗状態,皮膚の構造,マイクロバイオームとの関連を検討した。その過程で,ADに発汗障害があるが,発汗障害には,発汗低下と発汗増加があり,汗の分泌の不均一があることが明らかになった。アトピー性皮膚炎の外用治療薬における基礎発汗誘導作用を検討し,それによる皮丘の変化を検討した。その結果,外用剤により基礎発汗誘導作用に差があり,皮丘の大きさを正常化する働きにも大きな差がみられた。基礎発汗誘導能と皮丘の大きさを正常化する作用には,相関関係がみられた。抗炎症作用が強くても,基礎発汗を減少させる作用のある外用剤は,皮膚の正常構造を変動させてしまう。これらの結果から,アトピー性皮膚炎外用薬の評価軸として,抗炎症作用以外に,基礎発汗誘導能を加えるべきであると提言する。
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