研究実績の概要 |
本研究では、劣性栄養障害型表皮水疱症(Recessive dystrophic epidermolysis bullosa: RDEB)患者の線維芽細胞の機能解析をおこない、RDEBにおける「創傷治癒障害」と「有棘細胞癌発生」の病態解明を目指す。具体的には、RDEB患者線維芽細胞に特異的な分子発現(遺伝子およびタンパクレベル)を同定し、その分子が「創傷治癒障害」および「有棘細胞癌発生」に関与する分子機構を明らかにしてきた。
3年目において以下を実施した。北海道大学病院皮膚科に過去もしくは現在通院中のRDEB全患者(40例)およびその患者に生じた有棘細胞癌発生状況(40例中3例に生じている)のリスト化、臨床情報の収集、有棘細胞癌の進展に関与する分子(TRIM29,ケラチンの染色)を実施。RDEB患者における有棘細胞癌部および非癌部(コントロール部)の臨床検体の収集(ホルマリン、凍結検体、RNA)。合計40箇所以上の有棘細胞癌部検体および非癌部検体を得た。RDEB有棘細胞癌部および非癌部の線維芽細胞の初代培養の実施。RDEBモデルマウス(Ⅶ型コラーゲン欠損マウス)を樹立した。RDEB患者線維芽細胞が有棘細胞癌の増殖に寄与しているかどうかを検討するために、免疫不全マウスに対する異種皮下移植モデルを作成し、腫瘍形成能を解析した。具体的には、皮膚有棘細胞癌A431細胞と線維芽細胞を混合し、免疫不全マウス(Nu/Nuマウス、メス5週齢)の皮下に注射し、腫瘍の大きさを経時的に観察した。この実験では、RDEB患者線維芽細胞と正常線維芽細胞には差が認められなかった。
以上から、今回の研究からは、RDEB線維芽細胞の病的意義は明らかにできなかった。
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