研究実績の概要 |
我々は世界に先駆け、乾癬表皮細胞が炎症性サイトカインを誘導するretinoic acid-inducible gene-I (RIG-I)を強く発現していることを明らかにした (Kitamura, Matsuzaki et al, J Dermatol Sci, 2007)。また、紫外線 (UVB)がそのRIG-I発現を抑制することを見出し、RIG-I強発現や過剰な「自然免疫」反応を抑制することが乾癬治療にとって重要であることを証明した(Kimura, Matsuzaki et al, J Dermatol Sci, 2012)。乾癬皮膚の過剰な炎症反応を抑制する手段として、我々は免疫調整作用をもつ間葉系幹細胞に着目し、乾癬モデルマウスに局所投与したところ、皮膚症状は著明に改善し局所でのIL-17、TNF-αの発現も抑制することを証明した(Rokunohe, Matsuzaki, et al, J Dermatol Sci, 2016)。 本研究では、簡便に採取可能な脂肪由来の間葉系幹細胞(adipose tissue-derived mesenchymal stem cell: ASC)を用いる。ASCは骨髄系幹細胞に比べて、①採取が容易、②細胞の増殖速度が速い、③成長因子の分泌が多い、といったメリットがある。我々は、間葉系幹細胞がもつ ①傷害・炎症部位に幹細胞が集まるホーミング効果、②免疫抑制効果、を最大限利用し、炎症性皮膚疾患である乾癬をコントロールする治療法を開発することが研究の目的である。主に、病変に集積する間葉系幹細胞の細胞接着分子の解析、幹細胞から産生されるサイトカインの樹状細胞、リンパ球に与える影響を解明する。臨床応用に展開するための基盤となる研究である。
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