研究課題
本研究の目的は,血清チロシン濃度が表皮細胞の角化にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることである.Richner-Hanhart症候群(RHS)は,TAT遺伝子の変異によりチロシンアミノ変換酵素の活性が低下することで,高チロシン血症を呈し掌蹠に過角化を呈する稀な遺伝性皮膚疾患である.高チロシン血症により掌蹠のみに過角化が起こるメカニズムは,現在のところ解明されてない.我々はまず,RHS患者皮膚を詳細に検討した.掌蹠荷重部位に淡黄色調の過角化がみられ,病理組織では過角化,表皮肥厚,顆粒層肥厚,多核角化細胞を認めた.血清チロシン値は正常上限の約14倍と高値であったが,低チロシン・フェニルアラニン食餌療法を行い,チロシン値が低下すると,速やかに掌蹠の過角化は改善した.次にTAT遺伝子変異検索を行った.TAT遺伝子にc.449delTの送気停止コドンとなる欠失変異と,c.408+1G>Aのスプライシング異常が複合へテロ接合性にみられた.どのようなスプライシング異常が生じるか確認するため,TAT mRNAを用いたRT-PCRを行うこととした.肝細胞,末梢血白血球,角化細胞,線維芽細胞,健常人毛根組織を用いてRT-PCRを行ったところ,角化細胞以外でTAT mRNA発現を認めた.最も低侵襲にTAT mRNAを得るため,患者末梢血白血球および患者毛根組織からmRNAを抽出しRT-PCRを行ったが,いずれもTAT mRNA発現は確認できなかった.これは,スプライシング異常が早期停止コドンを誘導する変異であり,ナンセンス依存性RNA分解(NMD)を受けたためと考えられた.しかしながら,NMD阻害剤を用いれば,患者末梢血白血球や毛根を用いた非侵襲的なmRNAレベルでのTAT変異検索が可能になる可能性が示唆された.
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
Pediatric Dermatology
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Journal of Dermatological Scienece
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10.1016/j.jdermsci.2017.06.011