表皮の基底層優位に鉄局在が存在することが50年以上前から知られているが、詳しい鉄代謝制御に関する分子メカニズムについては解明されていなかった。我々は表皮細胞、特に表皮上層では細胞内鉄濃度の調節に中心的な機能を持つFerroportin遺伝子が強く発現しており、Ferroportin遺伝子を表皮特異的に欠損したマウスでは表皮上層で鉄濃度が高くなることを見出した。 本研究では、表皮における鉄代謝がアトピー性皮膚炎や尋常性乾癬を始めとした炎症性皮膚疾患モデルマウスにどのような影響を与えるかを解析する。初年度より当該研究に必要な表皮特異的Ferroportin遺伝子欠損マウスを作成するにあたり、現在我々で保持している129Sv背景のFerroportin flox/floxマウスをC57BL/6背景にするためにバッククロスを行い、今年度にバッククロスを完了した表皮特異的Ferroportin遺伝子欠損マウスの作成を終えた。アトピー性皮膚炎モデルや尋常性乾癬モデルを使用する予定であったが、鉄が表皮に残留することで酸化ストレスが強くなると考えたため、接触皮膚炎モデルおよび紫外線照射皮膚炎モデルを行った。接触皮膚炎モデルおよび紫外線照射皮膚炎モデルともにコントロールマウスを比較して、表皮特異的Ferroportin遺伝子欠損マウスの皮膚で炎症が強くみられ、炎症細胞浸潤が多くみられた。特に紫外線照射皮膚炎モデルでは表皮特異的Ferroportin遺伝子欠損マウスではの表皮で多くの壊死細胞がみられた。また、RT-PCRにて炎症性サイトカインなどの遺伝子発現が増強していることも確認した。
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