これまでの疫学調査で、乳幼児期までの成育環境が、その後のアレルギー疾患の発症に影響を及ぼすことが分かっている。このことは衛生仮説(hygienehypothesis)として提唱されている。すなわち、過度に清潔な環境下ではアレルギー疾患の発症率が高く、逆に適度に細菌、ウイルス、寄生虫への曝露がある場合はアレルギー疾患の発症率が低下する。このメカニズムはいまだ不明である。私たちは、アトピー性皮膚炎モデルマウスに寄生虫を感染させ、皮膚炎の発症の抑制、症状の軽快が生じるメカニズムを実験的に解明し、アトピー性皮膚炎をはじめとするアレルギー疾患の有効な治療法に繋げることを目標として研究を行った。特に、Natural Killer (NK) 細胞に焦点を当て研究を行った。 NC/Ngaマウスにマラリアを感染させることにより、皮膚局所でNK細胞が増加し、湿疹病変が改善することを確認した。また、抗アシアロGM1抗体をNC/Ngaマウスに投与し、NK細胞の除去実験を行ったところ、NK細胞を除去した後にマラリアを感染させても、マラリアによる皮疹の改善が見られなかった。次に、マラリア感染conventional condition NC/Ngaマウスの脾臓よりMiltenyi Biotec社のMACSシステム(細胞分離用磁気ビーズ)を用いてNK細胞を分離した。分離した細胞を湿疹を有するマラリア非感染conventional condition NC/Nga マウスに経静脈的に投与し皮膚炎の臨床的スコアリング、皮膚病理組織の免疫組織学的検討および免疫反応の検討を行った。
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