本研究は、ヒト表皮角化細胞動態を詳細に解析することで、角化幹細胞からの培養表皮シートの形成原理と創傷治癒における表皮組織の閉鎖における表皮角化細胞の集団的遊走機能解明を目指している。上記の表皮再生原理解明のため、本年度は以下の研究を行った。ヒト表皮角化細胞はマウス3T3線維芽細胞をフィーダー細胞として共培養すると、コロニーを形成する。細胞分裂によってこのコロニーは増大するが、同時に多層化が起こることが知られている。本研究では、位相差顕微鏡を用いたタイムラプスイメージングによってこの過程の連続画像を取得し、細胞分裂周期、細胞移動速度、細胞分裂面について、定量解析する手法を確立した。このフィーダー細胞を用いた培養系では、ヒト表皮角化細胞は幾つかの種類のコロニーを形成するが、それぞれのコロニータイプでの上記細胞動態パラメータの定量解析を行ったところ、幾つかのパラメータで違いを見出した。また、位相差顕微鏡画像から、多層化に関する細胞動態を見出したが、さらにその動態を確認するため、細胞核と細胞膜を蛍光ラベルできるウイルスベクターを作製し、共焦点レーザー顕微鏡によるタイムラプス3次元イメージングを行った。その結果、位相差顕微鏡で観察された細胞動態が、やはりz軸方向への細胞移動であることが明らかとなった。さらに、創傷治癒での表皮角化細胞の集団的遊走を解析するために、本年度は、培養系においてヒト皮膚片から角化細胞が遊走する過程をイメージングする系の開発を行った。手術から得られた余剰皮膚片をイメージング用ディッシュに固定し、培養数日後に皮膚片より角化細胞が遊走することを確認した。その状態のイメージング用ディッシュをタイムラプス観察したところ、皮膚片より表皮角化細胞が集団的に遊走する様子を確認することが出来た。
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