研究課題/領域番号 |
17K10233
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
徳力 篤 福井大学, 学術研究院医学系部門, 特別研究員 (90397274)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 皮膚炎症性疾患 |
研究実績の概要 |
乾癬などの皮膚炎症性疾患において好中球やマクロファージなどの免疫担当細胞が病態の主要な役割を果たしていると考えられている。さらに、それらを制御しているのは表皮細胞から産生される液性因子と考えられ、その同定が求められる。その候補として、我々がこれまでにin vitroで角化細胞の増殖や好中球の遊走を抑制することが明らかとしたデルモカイン(DMKN)-β/γに注目した。DMKNは、ヒトやマウスの角化細胞、特に顆粒層などの分化後期に発現する分泌型蛋白質で、ヒトやマウスにおける主要なアイソタイプはα、β、γの3つである。特にサイトカイン様ドメインを有するβは、自己ないし近傍の細胞に作用することによって機能を発揮していると推察される。生体内でのこの分子の機能を明らかにするため独自に作製したDMKN -β/γ 欠損マウスを使用し、乾癬様皮膚炎モデルを誘導して野生型マウスと比較を行った。DMKN-β/γ欠損マウスは、野生型マウスに比べ、イミキモド外用3日目から有意に強い炎症が惹起された。背部のHE染色では欠損マウスで角質と表皮の肥厚が見られ、免疫化学染色では浸潤する炎症細胞(好中球、マクロファージ、T 細胞)が増加していた。フローサイトメトリーによる炎症細胞の検討では塗布した皮膚にはIL-17A産生T細胞が優位に増加していた。この動物モデルに関与する主要なサイトカイン(IL-17A 、IL-23、TNF-α )、炎症細胞の遊走に関与するケモカイン(CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL4、CXCL5、CX3CL1、CCL2、CCL20 など)を含む多数のタンパク質のmRNAレベルでの発現量を比較した。いずれの項目においても欠損マウスで値が上昇している傾向が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた通り、マウスの背部に、5%イミキモドクリーム外用による乾癬様皮膚炎を誘導し、紅斑、浸潤、鱗屑の程度をスコア化し、各遺伝子型間に差異検討した。皮膚の組織学的表現型に関しても表皮の構築や肥厚、角質の性状、角層内膿疱の個数などに差異があるか否かについて、HE染色標本を用いて評価した。また、この動物モデルに関与するサイトカインや炎症細胞の遊走に関与するケモカインのタンパク質のmRNAレベルでの発現量に関しても検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に沿って各遺伝子型マウスから表皮角化細胞を採取・培養し、イミキモドを添加後(1時間、3時間、12時間後)のサイトカイン、ケモカインの発現や産生に差異があるか否かをreal-time RT-PCR法、ELISA法を用いて比較検討を行う予定である。
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