大気汚染物質によるアトピー性皮膚炎の発症機構は現在不明である。アリルハイドロカーボンレセプター(AhR)に着目し、Th2型反応をどの様に惹起するかを、表皮と免疫がどの様に関連するかを検討した。AhRによって、表皮細胞でのTSLP やIL-33 の誘導およびAhR活性化による樹状細胞や2型自然リンパ球(ILC2) の変化を確認した。AhR活性化による樹状細胞の解析について、表皮特異的AhR活性化マウス(AhR-CAマウス)の皮膚より、炎症細胞を分取し、フローサイトメトリー法(FCM)を用いた解析も行った。予備実験として、自然型(WT)マウスを用いて、FCMの条件検討を綿密に行い、皮膚サンプルから血球系の細胞の抽出をできた。そして、AhR-CAマウスと同腹のWTマウスを比較して行なった。WTマウスに比べ、AhR-CAマウスでは、白血球系の細胞が優位に増殖していた。そして、樹状細胞も増殖傾向にあった。さらに、あるタイプの樹状細胞は増殖、他のタイプは著変ないといった変化が認められた。近年、ランゲルハンス細胞を代表とする皮膚の樹状細胞には様々な機能別に分けられている。しかし、AhR-CAマウスの炎症誘発には、どの樹状細胞が重要かは特定できなかった。そして、FCMで使用したマウスより、皮膚組織サンプルも回収した。FCMと同じ傾向にあるかどうかについて、免疫染色を用いて、炎症細胞、樹状細胞について、増減しているかどうかを検証した。概ね同じような傾向があった。ILC2についてもFCMで検討した。ILC2は、AhR-CAマウスで、増加傾向にあることがわかった。Th2優位の炎症に至る機序にはいくつか経路があり、樹状細胞とILC2との関連についてさらに検討必要である。分子機序についても不明であり、今後シグナル伝達についても検討必要である。
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