研究課題/領域番号 |
17K10237
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
加納 宏行 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 非常勤講師 (40566494)
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研究分担者 |
清島 眞理子 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 教授 (00171314)
中村 光浩 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (30433204)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アトピー性皮膚炎 / サイトカイン / スキンブロット |
研究実績の概要 |
アトピー性皮膚炎(AD)の発症・病態維持に深く関わる皮膚角層バリア機能の低下に、角質細胞間脂質セラミドの脂肪酸側鎖の短鎖化が関与することも知られている。我々はIFN-γによる脂肪酸側鎖の短鎖化を培養ケラチノサイトとダニ抗原反復塗布による皮膚炎マウスで見いだしたが、Th1サイトカインIFN-γがAD患者の角層バリア異常に実際関与しているのか不明である。IFN-γを含めた病変部サイトカインを非侵襲的に検証する目的で、ニトロセルロースメンブレンを皮膚表面に貼付して、皮膚の蛋白質を経皮的に採取し、抗体を用いて検出する「スキンブロッティング 法」の検討をした。各種基礎実験(抗体の特異性、濃度、反応時間等の条件検討)の後、IL-4、IL-13、IL-31、IL-33、IFN-γ、TSLP、TNFα等をスクリーニングした。その結果、IL-4、IFN-γのシグナルがAD患者皮疹部で捉えられた。一方、IL-13、IL-31、IL-33、TSLP、TNFαのシグナルは捉えられなかった。加えて、バリア機能の低下の指標としてアルブミンを調べ、AD皮疹部で強い陽性シグナルがえられた。しかし、その後、2次抗体(抗マウスIgG抗体など)がヒトIgGも認識することが判明。皮疹部にはグロブリンも検出されるため、検出法を再検討。まず2次抗体だけを反応させ発色、その後に抗サイトカイン抗体、2次抗体で発色し(間接法)、交叉反応を除外、最後にHRP標識抗ヒトアルブミン抗体で発色する方法(三重染色)を確立した。この再検討に相当の時間を要し、研究期間を1年延長し、今後、実際の臨床例での検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまで得られたデータを詳細に検討した結果、バリア機能の低下しているアトピー性皮膚炎皮疹部ではアルブミン、グロブリンが相当量検出されることがわかった。そのため、2次抗体(抗マウスIgG抗体、抗ラビットIgG抗体など)の特異性を調べたところ、ヒトIgGにも交叉反応することが判明した。つまり、これまでサイトカインが検出されたと判断していたが、IgGの交叉反応をみている可能性が排除できないことになり、これを避けるための検討を行った。まず、HRPあるいはALPで標識された抗サイトカイン抗体を用いて2次抗体なしに検出する直接法を行ったが、抗体の感度が低いためうまくいかなかった。そこで、1枚のメンブレンをまずHRP標識2次抗体だけでシグナルを見てHRP失活させた後、抗サイトカイン抗体、2次抗体でシグナルをみて(間接法)HRPを失活、最後にHRP標識抗ヒトアルブミン抗体で発色という形の三重染色を試したところ、実用に供することができると判断した。これにより、1回目、2回目のシグナルを比較することでサイトカインの特異的発色を確認でき、同時にアルブミンでバリア破壊の程度も評価できる。この基礎実験に相当の時間を要したため予定より遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
新たに確立した方法で、臨床例でのスキンブロットを進める。ADの重症度、部位、皮疹のタイプ・性状などとIL-4、IFN-γのスキンブロット陽性/陰性との相関性を明らかにしたい。また、Th2サイトカインの関与が薄いとされる内因性ADでの検討も症例があれば検討したい。一方、ADでは多種のサイ トカインが関与していることが明らかになっているので、IL-4、IFN-γ以外のサイトカインの検出も引き続き試みるが、現在のところ、IL-13、IL-31、IL-33、 TSLP、TNFαは検出できていない。多種のサイトカイン環境の検討が不可能であれば、Th2サイトカインの関与が示唆されている他疾患、たとえば水疱性類天疱瘡、薬剤性過敏症症候群などでの検討、さらにはランダムに炎症性皮膚疾患でのサイトカイン環境も検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
スキンブロットの検出法の再検討が必要となり、複数の方法を検討するためにむしろ余分な費用と時間を必要とした。今後、期間を延長して実際に臨床例に応用する際の抗体購入費用を少しでも残す必要があった。
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