研究実績の概要 |
近年、PD-1やそのリガンドであるPD-L1が自己免疫疾患に関与していることが示唆されている。PD-1を欠損もしくは阻害したマウスにおいてI型糖尿病や関節リウマチ、Experimental autoimmune encephalomyelitis、SLEなどの悪化が報告されてきた。まず正常毛周期(成長期-退行期-休止期)におけるPD-L1の発現の変化、とくに免疫寛容がもっとも維持されている成長期での毛包上皮、もしくは毛包周囲の樹状細胞におけるPD-L1発現の変化を検討した。正常毛周期では成長期毛包毛乳頭やその付近に浸潤する肥満細胞上にPD-L1が発言していた。そこで毛包免疫寛容を破綻させる因子であるIFN-gによるPD-L1、PD-1発現への影響を検討した。IFN-gはPD-L1発言を毛乳頭においてやや軽減させる可能性を示唆したが、これについてはさらなる検討が必要である。過去の報告においては、IL-2やIL-7、IL-15などのサイトカインがPD-1発現を亢進させるとの報告もあるが、円形脱毛症病変部では改めて検討する必要がある。 円形脱毛症の発症モデルであるC3H/HeJマウスにおいて円形脱毛症をIL-15, IL-7, IL-2などで誘導する過程におけるPD-L1、PD-1発現の変化、そしてC3H/HeJマウスに円形脱毛症を誘導するにあたり(Wang et al. J Invest Dermatol 2015)、事前にPD-L1やPD-1発現を阻害することでその発症の時間的変化、重症度の変化をみる必要がある。抗PD-1抗体によってやや脱毛症状が誘導されやすい傾向があったが、まだマウスの実験数が少ないためさらなる検討が必要である。 またPD-1をKnockoutしたC3H/HeJマウスにおける円形脱毛症発症の状況を確認していきたい。
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