研究課題
この1年間で、われわれの施設で免疫チェックポイント阻害薬治療を受けた12例の患者より血清を採取した。これらの症例では、特異抗体を産生する膠原病(全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、皮膚筋炎/多発筋炎等)をもともと合併していたり、投与期間中に発症した症例がなかったが、約30%の4症例に抗甲状腺抗体を認めた。抗核抗体(抗細胞質抗体を含む)はすべての検体が血清80倍希釈で陽性であり、染色パターンに規則性は認めなかった。ある種の悪性黒色腫で組織内蛋白発現が上昇しているという報告もあり、一方、筋炎における疾患関連自己抗体の対応抗原でもあるDNA修復酵素(MSH2、MSH3、MSH6、MLH1、MLH3、PMS1、PMS2)に対する自己抗体の有無を次に検索した。リコンビナント蛋白を用いたELISA法で調べたところ、12検体すべての血清において7種類のDNA修復酵素に対する抗体は陰性であった。採血しえた12症例中、9症例は免疫チェックポイント阻害薬の一般的な効果判定基準である投与開始後3カ月以上経過した症例であった。そのうち、部分奏効例、完全奏効例は1例のみであった。メラノーマ細胞、HaCaT細胞の培養細胞から抽出した蛋白を用いて、患者検体12症例においてウエスタンブロットを行ったところ、3検体においてHaCaT細胞、メラノーマ細胞の両方の抽出蛋白に対し強い反応を認めた。そのうち1例は明らかなリンパ節転移を伴う踵5㎝大の黒色結節で、手術を施行せず抗PD-1抗体投与となった症例である。興味深いことに投与2か月で病変の明らかな縮小を認め、その後腫瘍は完全に転移部も含め消失したが、投与開始後3か月より露光部に発赤出現し、その後白斑に変化、次第に全身に拡大したという特徴的な臨床を呈していた。
2: おおむね順調に進展している
症例数は、やや予想を下回ったものの順調に血清採取は進み、解析もほぼ予定の通り進んでいる。
さらに症例を増やし、解析していない数多くの自己抗体の有無を網羅的に調べていく。臨床効果の高かった症例における自己抗体の対応抗原の同定を進めていく。
検討した症例数が若干、予想を下回ったため
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