研究課題/領域番号 |
17K10239
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
室 慶直 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (80270990)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 悪性黒色腫 / 免疫チェックポイント阻害薬 / 自己抗体 |
研究実績の概要 |
免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の登場で切除不能メラノーマに対する治療の状況は一変した。しかし治療効果の予測因子は確立されておらず、一方で免疫関連有害事象(irAE)として自己抗体の出現さらには自己免疫疾患の発症が問題となる。今回の研究はICIによるirAEの予測マーカーおよび治療の効果予測マーカーの解明が目的である。これまでに、市販ELISAキットで測定可能な自己抗体の他にも、我々が開発した様々な既知の自己抗体の測定系を使用し、ICI治療患者の自己抗体について調べた結果、特異的な抗体は検出されなかった。そこで、メラノーマ培養細胞のタンパクを用いた免疫沈降およびMALDI-TOFによるタンパク質同定解析により、ICIがメラノーマに対して奏功したがirAEとして後に白斑を生じた多型紅斑を呈した症例の血清から、治療後に陽転化した自己抗体として抗Ro52/60抗体を同定した。 Ro52とRo60の二つの抗原は、一部の膠原病患者に出現する抗SS-A抗体の対応抗原であるが、Ro52に対する自己免疫応答は膠原病に限らず、特発性間質性肺炎患者や一部の健常人にも認められ、その臨床的な意義は最終的結論に至っていない。またRo52抗原に関してはalternative splicingによるタンパクがある特定時期の胎児心臓に発現すると報告されており、抗Ro52抗体陽性母体の胎児に発症する心ブロックの原因抗体とも考えられているが、いまだに抗体の産生機構に関しては不明点が多いと言わざるを得ない。 治療薬による臨床効果の高かった症例において、自己抗体の対応抗原が少なくとも同定しえたものがあったので、それについて概要で述べたように解析を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検討症例数は、やや予想を下回り、結果も得られる予想と異なる結果となっているが、解析を進めるべき新たな結果も得られている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、抗Ro52/60抗体が発見された本患者のメラノーマ腫瘍組織やirAEとしての紅斑や白斑の皮疹組織における3種の抗原;Ro52α, Ro52β, Ro60について、それらの“altered expression”(変調発現)の有無やその様式について調べ、irAEとしての自己抗体産生機構の解明に迫りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
自己抗体の対応抗原の同定に時間がかかり、網羅的な抗体の解析実験に着手できなかったため。
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