研究課題
近年、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の登場により種々の悪性腫瘍に対する治療を取り巻く状況は大きく変化した。特にメラノーマのような従来の化学療法の効果があまり期待できない悪性腫瘍に対して、ICIの投与によって生命予後の改善も期待できるようになったが、その一方ICIによる免疫関連有害事象(irAE)が問題である。名古屋大学医学部附属病院において、メラノーマに対してICI治療が予定された症例32例中、ICI治療前後で最低1回ずつ血清抽出することができた20例を対象とし、便宜的にM1からM20まで割り当てた。当初は切除不能メラノーマを対象としていたが、研究期間中にメラノーマの術後補助療法についてもICI治療が可能になったため、術後補助療法としてICIを使用したメラノーマ症例も本研究に組み込んだ。培養メラノーマ細胞、培養ケラチノサイト(HaCaT細胞)の細胞培養を行い、これら細胞株を用いたウエスタンブロット法を行い、採取した血清を継時的に評価することで新規自己抗体の産生ならびに細胞特異的な抗原抗体反応の有無を評価した。またHEp-2細胞を基質とした市販の間接蛍光抗体検査キットを用いて、ICI治療前後で抗核抗体の抗体価、染色パターンの変化がないかについても確認した。4例で各症例に特異的と思われる抗原ポリペプチドに対する反応の増強を認め、そのうち3例で皮膚障害を認めた。しかし、いずれの症例血清にも共通する抗原に対する抗体の同定はできなかったため、irAE発症および治療効果予測のバイオマーカーの同定、バイオマーカーとなる自己抗体検出系の確立は今のところできていない。しかし、ウエスタンブロット法において投与前後で反応性に明らかな変化を示した自己抗体が皮膚障害に関連するバイオマーカーになる可能性も否定できないため、現在、抗原同定を試みるべくタンパク精製の実験を続行中である。
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