外来抗原による感作のない定常状態でもIgEは自然に産生されており、こうした自然産生IgEは免疫系の恒常性維持に必須であることが知られている。しかし、IgEが自然に産生されるメカニズムについてはほとんど知られていない。研究代表者はこれまでに、IgEの自然産生に非古典的MHC分子であるCD1dが必須であることを明らかにした。一方、卵白アルブミンの経皮感作によるIgE誘導にはCD1dは必須でないため、自然産生IgEは、通常の抗原感作により誘導されるIgEとは異なる特異的なメカニズムにより産生されていることが示唆される。そこで、本研究では、IgEがCD1d依存的に自然に産生されるメカニズムの詳細を明らかにしたい。 平成29年度の成果は以下のとおりである。 1)CD1d欠損マウスでは、野生型マウスと比較して血清中IgE値が有意に低下していることを明らかにした。 2)CD1d欠損マウスでは、皮膚肥満細胞上の高親和性IgE受容体の発現量は野生型と同等であるが、IgEの結合量は著明に低下していることを明らかにした。 3)CD1d欠損マウスでは、野生型マウスと比較して、抗IgE抗体投与による全身性アナフィラキシーの重症度が有意に軽減することを明らかにした。 4)放射線感受性の骨髄由来細胞でのみCD1dが完全欠損する骨髄キメラマウスでは、IgEの自然産生が障害されていた。一方、放射線抵抗性の細胞(上皮細胞やストローマ細胞など)のCD1dが完全欠損する骨髄キメラマウスでは、IgEの自然産生は障害されていなかった。
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