研究課題/領域番号 |
17K10249
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
立石 千晴 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (40597308)
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研究分担者 |
小澤 俊幸 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (50570602)
鶴田 大輔 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (90382043)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 水疱性類天疱瘡 / 瘡 抗BP180 IgE抗体 / Live cell imaging法 |
研究実績の概要 |
水疱性類天疱瘡 (Bullous Pemphigoid 以下 BP)は、表皮基底膜部のヘミデスモソーム構成分子の一つであるBP180に対する自己抗体により、全身の皮膚や粘膜に緊満性水疱・びらん・紅斑を生じる自己免疫性水疱症である。近年の高齢化により患者数は増加し病態解明が切望されている。我々は生きた細胞内でタンパク分子の動きを可視化するLive cell imaging法により、BP180が抗BP180-IgG抗体と結合し、細胞内に取り込まれ(内包化)、表皮基底部の細胞接着低下が起こることがBPの重要な発症機序であることをすでに報告している。一方、水疱性類天疱瘡患者において、抗ヒトIgE抗体であるomalizumab投与により水疱数が激減した報告など、抗BP180 IgE抗体の水疱性類天疱瘡の病態への関与も近年注目されている。 本研究では、Live cell imaging法を用いて、抗BP180 IgE抗体が水疱性類天疱瘡の病態にどのように影響するのか、さらに水疱性類天疱瘡の発症においてどのように関与するのかを解明することを目的としている。H29年度の研究期間においては、水疱性類天疱瘡患者血清より、抗BP180 IgE抗体を含むと考えられる総IgEを精製し、BP180のLive cell imagingに必要なGFP-BP180プラスミドを作成した。H30年度には、さらにこのIgEが804G細胞に発現させたGFP-BP180を細胞基底部から内包化させる様子をLive cell imaging法を用いて観察することに成功した。一方、BP-IgEの溶媒であるPBSを添加した場合はGFP-BP180の内包化が見られなかった。これらについて、再現性の確認も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
▼BP患者血清より、抗BP180抗体を含むと考えられる総IgEを精製:当院皮膚科を受診した類天疱瘡患者で、当研究に同意を得た患者で血清IgEが非常に高値であることがELISA法により分かった。患者血清を用いて抗ヒトIgE抗体を固相化したアフィニティーカラムにより患者血清10 mlから約100μgの総IgEを得た。イムノブロット法により、この総IgE (BP-IgE) 中に抗BP180抗体が含まれることが確認できた。 ▼GFP-BP180プラスミド作成:BP180のLive cell imagingに必要なGFP-BP180発現用プラスミドを作成した。新生児表皮ケラチノサイトからRNAを抽出後、cDNAを作成。PCRで増幅後、GFPベクターに融合させ、GFP-BP180プラスミドを得た。シークエンスにより変異がないことを確認としたのち、Lipofectamine3000を用いて804G細胞に発現させたところ、細胞内と細胞基底部にGFP-BP180局在が見られ、内在性BP180に近い局在を示すことが分かった。 ▼Live cell imaging:本年度に計画していたLive cell imagingの実験を行った。804G細胞をGFP-BP180のトランスフェクション後24時間後にガラスボトムディッシュに播種し、さらに24時間から48時間後に共焦点顕微鏡FLUOVIEW FV10i (Olympus)を用いてGFP-BP180の動態を観察した。類天疱瘡患者血清より精製したBP-IgE (100 ng/ml)を添加すると15-60 minの間に、細胞基底部に局在したGFP-BP180が細胞質内へ内包化するのが観察された。一方、BP-IgEの溶媒であるPBSを添加した場合はGFP-BP180の内包化が見られなかった。これらについて、再現性の確認も行った。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、当研究室において、以前に類天疱瘡患者から精製したBP-IgGがBP180ともに、細胞のマクロピノサイトーシスにより内包化することを報告している (Hiroyasu et al)。本研究で見られたBP-IgEによるBP180の内包化がBP-IgGによる内包化と同様の作用機序で行われるのか、また内包化の時系列や有効IgE濃度の差などについて検討する予定である。 今回用いたIgEは病態発症時に急激に増加したIgEであるため、大部分が類天疱瘡に関与するタンパクに対する自己抗体と考えているが、総IgEであるためBP180に対する抗体のみが含まれているわけではない。そこで、血清中IgEは非常に微量であり困難ではあるが総IgEより抗BP180抗体のみを分離して、同様の現象がみられるかどうかについても検討していく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究進行は概ね順調であるが、live cell imaging法の再現性の確認に時間がかかった。次年度計画の準備を本年度に行う予定であったが、準備は次年度におこなう予定である。
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