研究課題/領域番号 |
17K10250
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
浅田 秀夫 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (60252681)
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研究分担者 |
宮川 史 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (00346024)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 薬剤性過敏症症候群 / DIHS / ヒトヘルペスウイルス / HHV-6 / 再活性化 / 持続感染 / microRNA |
研究実績の概要 |
重症薬疹の一つである薬剤性過敏症症候群(DIHS)の病態形成に、HHV-6再活性化の関与が示唆されているが、その機序については不明な点が多い。 本研究では、近年ヘルペスウイルスの潜伏感染維持や再活性化へのスイッチにウイルス由来microRNA(miRNA)が関わっているという証拠が蓄積してきていることに着目し、DIHSの各ステージにおいて発現するHHV-6由来miRNAを同定・解析することにより、ウイルス再活性化や病態形成プロセスの解明と診断・治療への応用を目指している。 初年度には、DIHS急性期においてHHV-6再活性化時に血清中および単核球中にHHV-6前初期遺伝子のアンチセンスにコードされているhhv6b-miR-Ro6-2とhhv6b-miR-Ro6-3が検出されることを見出し、さらにhhv6b-miR-Ro6-2、-3の発現と有熱期間との間に有意な相関を認め、hhv6b-miR-Ro6-2のレベルは皮疹重症度とも関連することを明らかにした。 今回の研究では、DIHS発症後長期に渡りHHV-6の持続感染がみられた8症例について、HHV-6由来各種miRNAならびにmRNAの発現、臨床症状、血清中サイトカインの発現について解析した。その結果、HHV-6持続感染群では、間質性腎炎、関節炎、甲状腺炎などの慢性炎症性疾患を合併する頻度が高く、sIL-2Rが持続的に高値を示すことが判明したが、HHV-6の遺伝子発現については、一部にimmediate early gene(U90)mRNAが検出されたものの、hhv6b-miR-Ro6-1~4の発現は認められなかった。 以上の結果から、HHV-6持続感染は宿主免疫に影響を及ぼし、慢性炎症性疾患の発症に関わっている可能性が示唆されたが、HHV-6由来miRNAの病態への関与については、現時点では明確な証拠は得られていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、HHV-6由来miRNA についてはin vitroでの研究報告がいくつか存在するものの、生体内における発現を検討した報告はなかった。 初年度の研究で、hhv6b-miR-Ro6-1~4の各々のmiRNAについて、DIHSにおける発現時期とHHV-6再活性化時期との間に一定の関係がみられることが判明したことから、これらのmiRNAがHHV-6再活性化において何らかの重要な役割を果たしている可能性が示唆された。また、hhv6b-miR-Ro6-2、-3については、HHV-6再活性化以前から発現を認め、臨床症状との相関も見られたことから、DIHSの早期診断マーカーや疾患活動性の指標になり得る可能性が示唆された。 今回の研究では、DIHS発症後にHHV-6の持続感染がみられた患者について、その臨床的・免疫学的特徴とHHV-6関連遺伝子発現との関係について検討した。その結果、HHV-6の持続感染群では、sIL-2Rの高値が持続し、慢性炎症性疾患を合併する頻度が高いことが判明した。一方、HHV-6関連遺伝子については、immediate early gene(U90)mRNAのみが検出され、hhv6b-miR-Ro6-1~4の発現は認められなかった。HHV-6関連遺伝子の発現については、現在、DIHSの各ステージでの発現パターンについて、さらに詳細な解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
DIHSでは、急性期の症状が落ち着いてからも、HHV-6の活動が長期間にわたり持続する症例や、自己免疫症状を呈する症例が少なからず存在することが知られている。今回の研究では、DIHS発症後の慢性期の患者において、その病態とHHV-6由来の4種類のmiRNA(hhv6b-miR-Ro6-1~4)との関わりを明らかにすることはできなかったが、現在、DIHSの各ステージにおいてHHV-6関連遺伝子発現について、より詳細な解析を進めている。さらに、βヘルペスウイルス由来の他のmiRNAの発現についても解析を進め、DIHS慢性期におけるウイルスの関与を解明してゆく計画である。
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