本研究はアトピー性皮膚炎モデルにおいてマスト細胞の活性化・抑制に関わる分子をin vivoでスクリーニングする方法の開発を行う。CRISPR/Cas9法によって特定の分子がノックアウトされた場合に、活性化レベルが変化することを想定した。活性化に伴いCreリコンビナーゼを発現することによって導入した遺伝子長を変化させ、特定の分子がノックアウトされて活性化レベルが変化すると、ガイドRNA配列の検出頻度が変わるシステムの構築を試みた。 本研究初期にIL1RL1分子を欠損するとアトピー性皮膚炎モデルの重症度が低下することが明らかになった。骨髄由来マスト細胞(BMMC)を作製してIL1RL1のリガンドであるIL-33とIgEおよび抗原刺激を組み合わせると、炎症性サイトカインの増加が認められたことから、スクリーニングのポジティブコントロールとしてIL1RL1およびIgE受容体を選定した。 活性化状態によりCreリコンビナーゼの発現を変えるため、どのような分子のプロモータを用いるかの検討では、マスト細胞の活性化指標となるサイトカイン分子をBMMCを用いて検討したところ、MCP-1が鋭敏な指標となる可能性が示唆された。しかし、マウス皮膚の免疫染色では、定常状態においてもMCP-1のタンパク発現がマスト細胞に認められたことから、in vivoでは直接MCP-1を利用することができないことが明らかになった。最終年度にはこの問題を解決するため、同じ発現システムを用いながらタンパクレベルを調整する方法として、mRNAの3'UTRに分解を促す配列を取り入れたところ、Creリコンビナーゼの発現レベルの調節と、それにともないガイドRNAの検出長が変わるシステムの構築に成功した。実際にin vivoでの検討まで至らなかったが、本研究で開発された手法は様々なスクリーニング系に応用可能と考えられる。
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