研究課題/領域番号 |
17K10254
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
ニヨンサバ フランソワ 順天堂大学, 国際教養学部, 教授 (60365640)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | マスト細胞 / 抗菌ペプチド / 創傷治癒 / 炎症反応 / 血管新生 / アレルギー反応 |
研究実績の概要 |
皮膚由来抗菌物質の中で、β-デフェンシン(hBD)、LL-37、ソラヤシンなどが注目され、様々な皮膚疾患の病態に関与することが知られている。我々は、上記の抗菌物質が抗菌作用のみならず、幅広い免疫調節機能を持つことを見出した。これらの抗菌ペプチドが乾癬やアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患の病態に関与することが知られている。近年、新規の抗菌ペプチドであるインスリン様成長因子結合タンパク質5由来抗菌ペプチド(AMP-IBP5)が報告された。しかしながら、AMP-IBP5の抗菌作用以外の免疫調節機能は詳細な検討はなされていない。そこで本研究では、AMP-IBP5の役割を解明するため、ケラチノサイトやマスト細胞などの細胞における活性化、血管新生、創傷治癒などの機構を明らかにする。 平成30年度は、ヒトマスト細胞を用いてAMP-IBP5の作用を調べたところ、AMP-IBP5はマスト細胞の脱顆粒、遊走能、脂質メディエーターの放出と様々なサイトカイン・ケモカインの産生を誘導することがわかった。AMP-IBP5によるマスト細胞の活性化は、Mas関連遺伝子(Mrg)X2受容体が媒介していることが分かった。その下流ではMAPキナーゼ経路(ERK、JNK、p38)が働いていることが、MrgX2のsiRNAおよびERK、JNK、p38の特異的阻害剤の阻害効果により明らかになった。また、AMP-IBP5が実際にMAPキナーゼを活性化させることを確認した。 以上の結果は、新規の宿主防御ペプチドであるAMP-IBP5は抗菌作用に加えて、ヒトマスト細胞の活性化を通して炎症反応、アレルギー反応、血管新生及び創傷治癒の過程に貢献している可能性があることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の計画の①AMP-IBP5に対する特異的レセプター検索と同定、②AMP-IBP5のin vitro創傷治癒に及ぼす影響、③AMP-IBP5のin vivo発現及び創傷治癒効果の評価と④AMP-IBP5のin vivo血管新生機能に対する作用を明らかにし、学術論文で発表した。したので、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
①IGFBP5欠損マウスの血管新生と創傷治癒機能 ②AMP-IBP5のヒトマスト細胞や好中球などの細胞に対する作用 ③AMP-IBP5と他の皮膚由来抗菌物質との相乗効果
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次年度使用額が生じた理由 |
年度内に使い切れなかったので、次年度に繰り越す。 使用計画:消耗品の購入
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