研究課題
皮膚などの組織が産生する抗菌物質が微生物感染から生体を守るために重要な働きをしている。抗菌ペプチドは抗菌活性を発揮するだけでなく、サイトカイン/ケモカイン産生、細胞遊走、アポトーシスの調節など様々な役割を担っている。これらの抗菌物質の中で、ヒトβ-ディフェンシンやカテリシジンLL-37などが注目され、数多くの皮膚疾患の病態に関与することが知られている。近年、新規の抗菌ペプチドであるインスリン様成長因子結合タンパク質5由来抗菌ペプチド(AMP-IBP5)が報告された。しかしながら、AMP-IBP5の抗菌作用以外の免疫調節機能は詳細な検討はなされていない。そこで本研究では、AMP-IBP5の役割を解明するため、ケラチノサイトや線維芽細胞やマスト細胞における活性化、血管新生、創傷治癒などの機構を明らかにした。2020年度では、AMP-IBP5が正常なマウスおよび糖尿病性潰瘍モデルマウスの創傷治癒を促進することがわかった。AMP-IBP5の作用メカニズムを調べたところ、EGFR受容体とその下流であるSTAT1とSTAT3に関与することがわかった。2021年度では、糖尿病性潰瘍モデルマウスの皮膚創傷組織でのEGFR受容体、STAT1とSTAT3の発現が低いことがわかった。興味深いことに、糖尿病性潰瘍モデルマウスをAMP-IBP5で治療するとリン酸化したEGFR受容体、STAT1とSTAT3の発現を著しく増強することを確認した。以上のことから、AMP-IBP5が難治性糖尿病性潰瘍の創傷治癒を促進することによって、皮膚再生、感染症や難治性創傷などの疾患の治療法へ用できることが期待される。
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Wound Repair and Regeneration
巻: 30 ページ: 232~244
10.1111/wrr.12997