研究実績の概要 |
乾癬の皮疹形成初期には感染や物理的な刺激などで皮膚の樹状細胞やマクロファージが活性化され、TNF-α, IL-23,IL-20を産生し、T細胞などの炎症細胞、ケラチノサイトを活性化する。活性化される炎症細胞にはIL-17を産生するTh17細胞、肥満細胞、好中球、自然リンパ球、IL-22を産生するTh22細胞、IFN-γを主に産生するTh1細胞などが知られている。ガングリオシドは細胞膜表面の脂質ラフトに存在し、シグナル伝達を制御するスフィンゴリン脂質であるため、細胞性免疫、液性免疫の双方の調節作用を有することがわかっている。ガングリオシドにはGM1, GM2, GM3, GD1a, GD3, GT1bといった種類があり、GM1はToll like receptorの活性化を抑制し、活性化される単球のサイトカイン分泌抑制作用を有する。GM2とGM3はB細胞からの免疫グロブリンの産生やTNF産生を抑制する。GM3、GD3は表皮細胞増殖抑制、樹状細胞活性化抑制作用が知られている。GD1aはT細胞活性化抑制作用と線維芽細胞増殖抑制作用を有する。また、GT1bは表皮細胞増殖抑制効果がある。野生型BALB/cマウスにイミキモド(IMQ)を連日(6日間)外用し乾癬皮疹を誘導する際に(詳細は後述)、連日PBS 0.5mlまたはガングリオシド(GM1, GM2, GM3, GD1a, GD3)20ugを腹腔内投与したところ、再現性をもって、乾癬様皮疹の臨床的、組織学的改善が認められることが確認された。乾癬の皮疹に浸潤する細胞(T細胞、樹状細胞、単球、好中球)の数をガングリオシド投与群およびPBS投与群で免疫組織学的に検討し、ガングリオシドがどの炎症細胞浸潤を抑制しているかを検討したところ、臨床的、組織学的改善が認められたマウス群においてはこれらの細胞浸潤抑制も認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの計画はGM1, GM2, GM3, GD1a, GD3, GT1bといった種類が多数あるガングリオシドにおいて、再現性をもって乾癬のマウスモデルにおいて改善効果を認めることを臨床的、組織学的(病理、免疫染色)に確認することであったため、その目的は達せられており、概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度においては予定通りガングリオシドおよびPBS投与下のイミキモド誘発乾癬マウス皮膚におけるサイトカイン、ケモカインのmRNA発現をreal-time PCR法にて定量的に測定する。サイトカインとしては、①Th1サイトカインであるIFN-g、CXCL9、CXCL10、CXCL11、②Th17サイトカインおよびケモカインであるIL-17A、IL-17F、IL-12p40、IL-23、CCL20、③乾癬の病態形成に関与している各種サイトカインであるTNF-α、IL-1α、IL-1β、IL-6、IL-8、IL-10、、IL-22などを測定する。GM1, GM2, GM3, GD1a, GD3, GT1bといった種類が多数あるガングリオシドにおいて、それぞれの効果の免疫学的抑制機序の違いを検討したいと考える。
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