研究実績の概要 |
イミキモドを皮膚に外用して作成するイミキモド誘発乾癬モデルマウスは、著明な鱗屑と浸潤を伴う紅斑を特徴とし、組織学的には表皮肥厚、真皮上層の炎症細胞浸潤を有し、乾癬患者の病態をよく反映するモデルマウスであると考えられている。また、病変部皮膚ではIL-17A,IL-17F, IL-23といった乾癬に関連する各種サイトカインの産生が亢進している。イミキモドはTLR7/8のリガンドであり、外用により形質様樹状細胞を活性化し、乾癬の病態を形成すると考えられている。イミキモド外用によって引き起こされる一連の炎症細胞活性化および表皮肥厚は、ヒト乾癬患者においても認められる現象であり、イミキモド誘発乾癬モデルマウスにおける皮膚は乾癬と類似した免疫学的異常によることが推察される。今回の研究では、ガングリオシドが乾癬の病態に与える影響、特に炎症細胞浸潤やサイトカイン産生に与える影響が明らかにされた。ガングリオシドは細胞膜表面の脂質ラフトに存在し、シグナル伝達を制御するスフィンゴリン脂質であるため、細胞性免疫、液性免疫の双方の調節作用を有することがわかっている。ガングリオシドにはGM1, GM2, GM3, GD1a, GD3, GT1bといった種類があり、それぞれに異なる免疫調整作用を有する。野生型BALB/cマウスにイミキモド(IMQ)を連日(6日間)外用し乾癬皮疹を誘導する際に、連日PBS 0.5mlまたはガングリオシド(GM1, GM2, GM3, GD1a, GD3)20ugを腹腔内投与したところ、再現性をもって、乾癬様皮疹の臨床的改善が認められた。ガングリオシドの乾癬に対する治療効果が明らかになることで、経口服用が可能な新規治療薬になる可能性があり、本研究は極めて重要であると考える。
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