研究実績の概要 |
今年度の実験期間中に新たに悪性黒色腫細胞株を3株、良性の母斑細胞の細胞培養株を9株樹立し、培養細胞からDNAを抽出し、BRAFV600Eの変異の有無を調べた。抽出したDNAを用いpyro sequence法で検討したところ、黒色腫細胞株では3株の内1株に、母斑細胞株では9株中3株にBRAFV600Eの変異が見られた。 BRAFV600Eの変異のある黒色腫細胞1株、変異のない黒色腫細胞1株、BRAFV600Eの変異のある母斑細胞2株、変異のない細胞3株より蛋白を抽出し、MAPK pathway関連分子のリン酸化を見るために、MPAK測定用抗体アレイHuman MAPK Pathway phosphorylation Array C-Series(RayBiotech/abcam)を用いたDot blot analysisにて17種類のMAPK関連分子の検討を行った。BRAFV600Eの変異のある黒色腫細胞株ではERK1/2, CREB, GSK3a, GSK3b, JNK, MEK,MKK3,MKK6, MSK2, mTOR, RSK1, RSK2のリン酸化が亢進しているのに対し、BRAFV600E変異のある母斑細胞株ではこれらのリン酸化が亢進していないことが判明した。BRAFV600Eの変異のある黒色腫細胞株で、多くのMAPK関連分子のリン酸化が見られ、それはBRAF変異のない黒色腫細胞株と有意な差が見られた。一方BRAFV600Eの変異のある母斑細胞株では変異のない母斑細胞株に比べてMAPK関連分子の有意なリン酸化は見られず、またERK1/2のリン酸化の誘導も生じていないことがわかった。これらのことより母斑細胞ではBRAFV600Eに変異があってもERK1/2、MEKのリン酸化が生じないように脱リン酸化の機構が働いていることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
悪性黒色腫細胞株3株、母斑細胞株9株を樹立し、BRAFV600E変異についてpyro sequenceで検討し、黒色腫細胞株1株、母斑細胞株3株でこの変異があることを同定した。 さらにこれらの細胞を用いてMPAK測定用抗体アレイHuman MAPK Pathway phosphorylation Array C-Series(RayBiotech/abcam)を用いたDot blot analysisにて17種類のMAPK関連分子の検討を行った。BRAFV600Eの変異のある黒色腫細胞株ではERK1/2, CREB, GSK3a, GSK3b, JNK, MEK,MKK3,MKK6, MSK2, mTOR, RSK1, RSK2のリン酸化が亢進しているのに対し、BRAFV600E変異のある母斑細胞株ではこれらのリン酸化が亢進していないことが判明した。またBRAFV600E変異のない母斑細胞株と比較してもこれらリン酸化状態の亢進はみられなかった。特にBRAFV600Eに変異があるにもかかわらずERK1/2、MEKのリン酸化の亢進がみられなかったことより、母斑細胞では脱リン酸化の機構が働いていることが判明した。
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