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2018 年度 実施状況報告書

悪性黒色腫におけるMAPキナーゼ活性化制御分子の同定

研究課題

研究課題/領域番号 17K10258
研究機関日本医科大学

研究代表者

船坂 陽子  日本医科大学, 医学部, 教授 (30209150)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード悪性黒色腫 / MAPキナーゼ / BRAF変異 / NRAS変異 / リン酸化 / 脱リン酸化
研究実績の概要

実験期間中に樹立した悪性黒色腫細胞株3株、良性の母斑細胞の細胞培養株を9株およびすでに樹立していた悪性黒色腫細胞株HM3KOおよび市販の悪性黒色腫細胞株3株を用い、培養細胞からDNAを抽出し、NRASの変異の有無を調べた。抽出したDNAを用いdirect sequence法で検討したところ、いずれの細胞においても変異は見られなかった。BRAFV600Eの変異についてはdirect sequence法にてHM3KOおよび市販の細胞株について検討したところ、HM3KOにてBRAFV600Eの変異が見られた。
昨年度BRAFV600Eの変異のある黒色腫細胞2株、変異のない黒色腫細胞1株、BRAFV600Eの変異のある母斑細胞2株、変異のない細胞3株より蛋白を抽出し、MAPK pathway関連分子のリン酸化を見るために、MPAK測定用抗体アレイにてMAPK関連分子の検討を行った。BRAFV600Eの変異のある黒色腫細胞株で、多くのMAPK関連分子のリン酸化が見られ、それはBRAF変異のない黒色腫細胞株と有意な差が見られた。一方BRAFV600Eの変異のある母斑細胞株では変異のない母斑細胞株に比べてMAPK関連分子の有意なリン酸化は見られず、またERK1/2のリン酸化の誘導も生じていないことがわかった。そこで、BRAFV600Eの変異のある母斑細胞株の培養液に種々の増殖刺激因子(cAMP inducerのIBMX, 下垂体エキス、増殖刺激因子のbFGF, ET-1, TPA)を各々添加し、pERKを認識する抗体でWestern blottingを施行したところ、TPA刺激にてERKのリン酸化が誘導されることがわかり、母斑細胞でBRAFV600Eに変異があってもERK1/2、MEKのリン酸化が生じないように脱リン酸化の機構が働いている場合、これはTPAで打ち消されている事が判明した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

さらに既樹立した悪性黒色腫細胞株HM3KOならびに市販の悪性黒色腫細胞3株でBRAFV600Eの変異を検討したが、HM3KOのみ変異が見られた。昨年度樹立した悪性黒色腫7株、母斑細胞株9株にてNRAS変異については全てにおいて変異がなかった。
MPAK測定用抗体アレイを用いたDot blot analysisにて17種類のMAPK関連分子の検討を行った。BRAFV600Eの変異のある黒色腫細胞株ではERK1/2, CREB, GSK3a, GSK3b, JNK, MEK,MKK3,MKK6, MSK2, mTOR, RSK1, RSK2のリン酸化が亢進しているのに対し、BRAFV600E変異のある母斑細胞株ではこれらのリン酸化が亢進していない。またBRAFV600E変異のない母斑細胞株と比較してもこれらリン酸化状態の亢進はみられ図、特にBRAFV600Eに変異があるにもかかわらずERK1/2、MEKのリン酸化の亢進がみられなかったことより、母斑細胞では脱リン酸化の機構が働いていることを昨年度明らかにしていた。そこでBRAFV600Eの変異のある母斑細胞株の培養液をO/Nで1%血清のMEMでdepriveした後、種々の増殖刺激因子(cAMP inducerのIBMX, 下垂体エキス、増殖刺激因子のbFGF, ET-1, TPA)で刺激30分後にタンパクを抽出してpERKの抗体を用いたWestern blottingにて検討したところ、TPAにてERKのリン酸化が生じることがわかり、母斑細胞でBRAFV600Eに変異があってもERK1/2、MEKのリン酸化が生じないように脱リン酸化の機構が働いている場合、これはTPAで打ち消される事、TPAで活性化するリン酸化シグナルを脱リン酸化するシグナルが母斑細胞で活性化していることが判明した。

今後の研究の推進方策

BRAFV600Eの変異のある黒色腫細胞および母斑細胞、ならびにBRAFV600Eに変異のない母斑細胞の蛋白を用い、BRAFおよびERKに対する抗体を用いてdetergentを緩い状態とした条件で免疫沈降によりBRAFおよびERKに結合する蛋白を得、2次元電気泳動にて脱リン酸化酵素を網羅的に解析し、BRAFV600Eに変異があるにもかかわらずERK1/2、MEKのリン酸化の亢進が生じないように働いている脱リン酸化酵素を同定する。同時にnCounter装置を用い増殖・アポトーシスに関わるシグナル伝達関与遺伝子を網羅するHuman CAE (Gene)Panel を用いて遺伝子発現プロフィールも解析し、母斑細胞における自律増殖の抑制作用について明らかにしていく。また、このうちTPAで活性化されるシグナルについて注目して解析していく。

次年度使用額が生じた理由

今回の実験で当初予定した結果が得られ、次年度さらに詳細に解析するために物品費が当初の計画より上回ることが考えられ、次年度に計上することにした。

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公開日: 2019-12-27  

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