研究実績の概要 |
実験期間中に樹立した悪性黒色腫細胞株3株、良性の母斑細胞の細胞培養株を9株およびすでに樹立していた悪性黒色腫細胞株HM3KOおよび市販の悪性黒色腫細胞株3株を用い、培養細胞からDNAを抽出し、NRASの変異の有無を調べた。抽出したDNAを用いdirect sequence法で検討したところ、いずれの細胞においても変異は見られなかった。BRAFV600Eの変異についてはdirect sequence法にてHM3KOおよび市販の細胞株について検討したところ、HM3KOにてBRAFV600Eの変異が見られた。 BRAFV600Eの変異のある黒色腫細胞2株、変異のない黒色腫細胞1株、BRAFV600Eの変異のある母斑細胞2株、変異のない細胞3株より蛋白を抽出し、MAPK pathway関連分子のリン酸化を見るために、MPAK測定用抗体アレイにてMAPK関連分子の検討を行った。BRAFV600Eの変異のある黒色腫細胞株で、多くのMAPK関連分子のリン酸化が見られ、それはBRAF変異のない黒色腫細胞株と有意な差が見られた。一方BRAFV600Eの変異のある母斑細胞株では変異のない母斑細胞株に比べてMAPK関連分子の有意なリン酸化は見られず、またERK1/2のリン酸化の誘導も生じていないことがわかった。そこで、BRAFV600Eの変異のある母斑細胞株の培養液に種々の増殖刺激因子(cAMP inducerのIBMX, 下垂体エキス、増殖刺激因子のbFGF, ET-1, TPA)を各々添加し、pERKを認識する抗体でWestern blottingを施行したところ、TPA刺激にてERKのリン酸化が誘導されることがわかり、母斑細胞でBRAFV600Eに変異があってもERK1/2、MEKのリン酸化が生じないように脱リン酸化の機構が働いている場合、これはTPAで打ち消されている事が判明した。
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