研究課題/領域番号 |
17K10265
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
橋本 佐 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任准教授 (60396679)
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研究分担者 |
中里 道子 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任教授 (10334195)
渡邉 博幸 千葉大学, 社会精神保健教育研究センター, 特任教授 (20302557)
伊豫 雅臣 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (50191903)
竹内 崇 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 講師 (70345289)
寺尾 岳 大分大学, 医学部, 教授 (80217413)
佐藤 泰憲 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (90536723)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 周産期メンタルヘルス / うつ病 / 双極性障害 / 精神薬理学 / 妊娠可能年齢 |
研究実績の概要 |
「将来の妊娠可能性を考慮したうつ病・双極性障害の薬物療法実践に関するレセプトデータベース(NDB)を用いた処方調査」は、第1回オープンデータを用いた外来処方調査を、Yoshimura K, Hashimoto T et al,Clinical Neuropsychopharmacology and Therapeutics,9,20-28 (2018)に公表した。処方の経時的変化は、現在、厚生労働省から集計表情報の提供待ちである。
「精神科医を対象としたうつ病・双極性障害薬物療法と妊娠に関する全国アンケート調査」は、1,414施設に質問紙4,816部を配布し、571名(11.9%)の回答を得た。主な結果であるバルプロ酸処方に関して、有効回答513名中、妊娠期の双極性障害では、「全く処方しない:387名(75.3%)」に対して、妊娠可能年齢である青年期(18から24歳)においては「よく処方する:99名(32.2%)」、「たまに処方する:116(37.8%)」、「あまり処方しない:69名(22.5%)」、「全く処方しない:23名(7.5%)」、と妊娠可能年齢にある双極性障害女性へのバルプロ酸処方の配慮が足りないと示唆された。日本周産期メンタルヘルス学会学術集会(2018年10月)、日本総合病院精神医学会総会(2018年11月)にて発表した。
「前向きコホート観察研究」については、研究期間内に妊娠・出産を経験する患者数が未知数となることから、次のように計画変更した:(1)千葉県内で、精神疾患をもつ妊産婦に対応可能な医師(現在、産科医7名・精神科医30名)を県に登録するシステム作りを遂行中、(2)対象者を精神疾患合併をはじめとする特定妊婦とその児・夫として、「心理・社会的困難を有する妊娠女性とその児および家族に関する前向き観察研究(UMIN000034605)」として実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「前向きコホート観察研究」について、当初は「うつ病・双極性障害で妊娠可能年齢の女性患者」を対象に妊娠・出産の母児転帰を前向き観察する予定であったが、研究期間内に妊娠・出産する登録患者数が、検討するに十分なサンプルサイズまでが集まらないことが懸念し、計画変更を行った。変更内容は、研究実績の概要にも記載したように、(1)千葉県内で、精神疾患をもつ妊産婦に対応可能な精神科・産科医師を県に登録するシステム作りを2018年度に着手し(現在、産科医7名・精神科医30名)、2019年度で登録システムを完了させること。(2)対象者を「うつ病・双極性障害をはじめとして精神疾患や社会的困難をかかえた特定妊婦とその児・夫/パートナーとした、「心理・社会的困難を有する妊娠女性とその児および家族に関する前向き観察研究(UMIN000034605)」という研究課題とし、千葉大学医学部附属病院を中心とした、多施設共同研究での前向きコホート研究である。「特定妊婦群」と、妊娠初期に心身ともに健康な妊婦:「健常対照群」として、現在千葉大学医学部附属病院で12名登録・観察中であり、現在旭中央病院で「健常対照群」の倫理審査を準備中である。今後、「特定妊婦群」の医療機関を増やしていく。
「教育効果研究:日本周産期メンタルヘルス学会 周産期メンタルヘルスコンセンサスガイド2017、に基づいた精神科医向けの講習会による教育効果の検証研究」は、平成30年度実施の予定であったが、上記コホート研究に予想以上にエフォートを割いたため、準備のみ行った。教育効果研究は2019年度に実施する。
進捗状況がやや遅れていると判断したのは、当初、教育効果研究を平成30年度に実施予定であったが、準備段階までとなり、実施予定が平成31年度になるためである。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者は、心理・社会的困難を有する妊娠女性とその児および家族に関する前向き観察研究A Family-based prospective cohort study On Women with Psychosocial Problems in the Perinatal Period (FOWPs study, UMIN000034605)、の発展的継続を計画している。FOWPs studyは従来の大規模研究とは違い、①個々の患者の臨床情報を直接評価する、②妊娠前を含めた薬の服用情報を精緻に調査する、③産科的評価を精緻に行う、④食事を含めた妊婦のライフスタイルを調査する、⑤研究代表者らが実施した周産期メンタル不調と児童虐待の取り組みに着目した予備調査(Okato A, Hashimoto T et al., J Multidiscip Healthc. 2018)を基に、周産期メンタル不調への取り組みと児童虐待対応との関連を調べる点が特徴的である。
よって、FOWPs studyの主な目的としては、①精神疾患等の心理的困難や社会的困難を有する妊娠女性の精神科治療や心理社会的介入と、母とその児および夫/パートナーの転帰の関連を検証し、②心理社会的困難を抱えた妊婦・家族に、どのような児童虐待防止の方策や家族支援が有益か検証するため、児の生後3年までフォローアップする計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定より教育効果研究やアンケート調査研究の論文投稿が遅れたため、教育効果研究の実施に要する費用(会場使用料や印刷代など)と、英文校正費用に使用する計画である。
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